湯 ページ31
明くる朝である。
早速、コハクの村へ行こうといそいそと準備を始めたのだが。
「ああ、村へ行く前に、別で行きたいところがあるのだ」
コハクが言うので、私たちはそれについて行った。
「村はここから遠いの?」
コハクの隣を歩きながら尋ねる。多分、コハクは同い年だろうなと思いつつ、辺りを見渡す。
森を抜けると、朝の光が直に目に刺さる。眩しい。
「私は毎日ここに来ているのでな。遠いとは思わないが……」
「毎日?」私は目をぱちくりさせる。
毎日来ているのか。コハクの方を見ると、コハクは「そうだ」と返した。
「毎日お湯を汲みにここへ来ている」
「お湯ー?」部長が眠そうに訊く。
ふと、近くに水瓶らしき土器が置いてあるのを見つけた。
コハクはよいしょとそれを持ち、先に進む。目の先に、何か湯気のようなものが昇っているのが分かる。
ため池のようなところに、白く濁った湯が揺らめいていた。
「温泉……」私はぼそりと呟く。ここにもあったのか。
ごぼごぼと音をたてながら、水瓶の中に湯が流れていく。
「運んで帰って、温泉の風呂を作る」
「療養のためにな」と言って、コハクは水瓶を両手で抱える。
おそらく、尋常じゃないくらいに重いだろう。
「どう見ても100億%優良児じゃねえかテメー。お元気一杯雌ライオンがそれ以上療養してどうすんだ」
そこへ部長が、空気を読まない発言をする。
「め、雌ライオン!?」コハクはそんな事を言われるとは思わず、少し傷付いたような顔をして叫ぶ。
ようやく部長の口の悪さが分かったと言う訳だ。
「気にしないで…。部長はそういう奴」苦笑しながら慰めてやる。
「ああ、全く実に腹が立つな。療養するのは、私じゃなく姉者だ!!」
部長を睨み付けていたが、すぐに顔を前に向ける。
「全く……実に迷惑千万の足手まといな姉者だ。最近はとくに具合が優れない」さっきとはうって変わって、心配するような表情を見せた。
「私のこの、あり余る健康体と代わってあげられるものならな」
50リットルはモテませんでした→←聖母のような微笑み(コハク)
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長庚 - ぽぽぽさん» お言葉物凄く支えになります、更新頑張らせていただきます! (10月6日 16時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - うおおおおおお!更新頻度高くてすごい助かります!!普通に話作るのうますぎて吐きそう!!頑張れええ!! (10月6日 0時) (レス) @page39 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - ありがとうございますー!実は風邪ひいてしまってですね……体調には気をつけます!(*`・ω・)ゞ (10月2日 19時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - んふふふふふふ。何これ面白い…可愛い…。体調に気をつけて更新頑張ってください! (10月2日 17時) (レス) @page33 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - マジモンの名無しさん» ありがとうございます!これからも作品の腕を上げて参ります! (9月28日 21時) (レス) @page29 id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長庚 | 作成日時:2023年9月12日 22時