検索窓
今日:50 hit、昨日:25 hit、合計:27,732 hit

呼称(コハク) ページ29

肯定的に言った筈が、それを聞いた二人、まず紳士の方は顔を引きつらせた。

「信念に惚れたぁ?言ってる意味がさっぱり分からねぇよ」

男の面倒そうな顔を見た淑女使いが、慌てて取り繕うように笑いを見せる。

「わ、私は分かるよ?安心して、この人は信念とかいう言葉をあまり使わないから…」はは、と頬をかいた淑女使い。私も硬い笑いを浮かべる。

とりあえず、彼女は人に温厚な性格らしい。

それに比べ、紳士使いはそのような温厚さは欠片ほども見受けられない。

「テメーが狼煙を上げたんだろ。惚れたはれたってんなら俺達の仲間にでもなれってこった」

今もこの言い様だ。私もこれには少し驚いている。

「ちょっ…もっと交渉らしい交渉しないと…」

しかし、仲間になれ、か……。

私の命を救った二人の人間。私はこの二人の力になりたいと、今衝動的に感じている。

二人の妖術、いや科学とやらも気になる。

私は何かの勘のようなものに、賭けてみようと思った。

「…いや、交渉の必要はないぞ。君達に協力しよう」

私が言うと、二人はばっとこちらを向いた。

真っ直ぐ、"いいのか?"というような目で私を見てくる。

私が大きく頷くと、淑女使いの顔が明るくなった。

私の手を掴み、ぎゅっと握った。

「ありがとう、コハクちゃん……!」

何だか、この女の笑いは妙に安心する。

「……コハクでいい。…君達の名はさっき話している時に大体分かったぞ」

先ほどからくりを作成していた時に、二人の会話も聞こえてきたのだ。名前も確かに呼び合っていた。

ふっ、と私は得意げに言う。

「"A"と、"ぶちょう"でいいか?」

「ぶ………!?」女は素っ頓狂な声を上げた。刹那、二人の表情が固まり、言葉を詰まらせる。

「………………」「ぶちょう……………」

男の目が死んでいる。女の方は、口元を押さえて必死に笑いを堪えている。

…私が見ても分かる。

これは名前があっている時の反応ではない。

「な、何だ?名前が違ったか……?」

言った時の自信がみるみる小さくなり、居たたまれない気分になる。

「あ゛ーー。全っ然、違えなぁ。…俺は千空だ」

「…千空?

じゃあ"ぶちょう"というのは何なのだ?」

確かに女……Aは紳士使いを"ぶちょう"と呼んでいた。それにAは笑いながら答える。

「部長っていうのは……一種の呼称?かな。本当の名前じゃないよ」

「なっ、そうなのか…」人を名前以外で呼ぶことなんてあるのか。

聖母のような微笑み(コハク)→←助けられた(コハクside)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (30 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
79人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

長庚 - ぽぽぽさん» お言葉物凄く支えになります、更新頑張らせていただきます! (10月6日 16時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - うおおおおおお!更新頻度高くてすごい助かります!!普通に話作るのうますぎて吐きそう!!頑張れええ!! (10月6日 0時) (レス) @page39 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - ありがとうございますー!実は風邪ひいてしまってですね……体調には気をつけます!(*`・ω・)ゞ (10月2日 19時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - んふふふふふふ。何これ面白い…可愛い…。体調に気をつけて更新頑張ってください! (10月2日 17時) (レス) @page33 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - マジモンの名無しさん» ありがとうございます!これからも作品の腕を上げて参ります! (9月28日 21時) (レス) @page29 id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:長庚 | 作成日時:2023年9月12日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。