呼称(コハク) ページ29
肯定的に言った筈が、それを聞いた二人、まず紳士の方は顔を引きつらせた。
「信念に惚れたぁ?言ってる意味がさっぱり分からねぇよ」
男の面倒そうな顔を見た淑女使いが、慌てて取り繕うように笑いを見せる。
「わ、私は分かるよ?安心して、この人は信念とかいう言葉をあまり使わないから…」はは、と頬をかいた淑女使い。私も硬い笑いを浮かべる。
とりあえず、彼女は人に温厚な性格らしい。
それに比べ、紳士使いはそのような温厚さは欠片ほども見受けられない。
「テメーが狼煙を上げたんだろ。惚れたはれたってんなら俺達の仲間にでもなれってこった」
今もこの言い様だ。私もこれには少し驚いている。
「ちょっ…もっと交渉らしい交渉しないと…」
しかし、仲間になれ、か……。
私の命を救った二人の人間。私はこの二人の力になりたいと、今衝動的に感じている。
二人の妖術、いや科学とやらも気になる。
私は何かの勘のようなものに、賭けてみようと思った。
「…いや、交渉の必要はないぞ。君達に協力しよう」
私が言うと、二人はばっとこちらを向いた。
真っ直ぐ、"いいのか?"というような目で私を見てくる。
私が大きく頷くと、淑女使いの顔が明るくなった。
私の手を掴み、ぎゅっと握った。
「ありがとう、コハクちゃん……!」
何だか、この女の笑いは妙に安心する。
「……コハクでいい。…君達の名はさっき話している時に大体分かったぞ」
先ほどからくりを作成していた時に、二人の会話も聞こえてきたのだ。名前も確かに呼び合っていた。
ふっ、と私は得意げに言う。
「"A"と、"ぶちょう"でいいか?」
「ぶ………!?」女は素っ頓狂な声を上げた。刹那、二人の表情が固まり、言葉を詰まらせる。
「………………」「ぶちょう……………」
男の目が死んでいる。女の方は、口元を押さえて必死に笑いを堪えている。
…私が見ても分かる。
これは名前があっている時の反応ではない。
「な、何だ?名前が違ったか……?」
言った時の自信がみるみる小さくなり、居たたまれない気分になる。
「あ゛ーー。全っ然、違えなぁ。…俺は千空だ」
「…千空?
じゃあ"ぶちょう"というのは何なのだ?」
確かに女……Aは紳士使いを"ぶちょう"と呼んでいた。それにAは笑いながら答える。
「部長っていうのは……一種の呼称?かな。本当の名前じゃないよ」
「なっ、そうなのか…」人を名前以外で呼ぶことなんてあるのか。
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長庚 - ぽぽぽさん» お言葉物凄く支えになります、更新頑張らせていただきます! (10月6日 16時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - うおおおおおお!更新頻度高くてすごい助かります!!普通に話作るのうますぎて吐きそう!!頑張れええ!! (10月6日 0時) (レス) @page39 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - ありがとうございますー!実は風邪ひいてしまってですね……体調には気をつけます!(*`・ω・)ゞ (10月2日 19時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - んふふふふふふ。何これ面白い…可愛い…。体調に気をつけて更新頑張ってください! (10月2日 17時) (レス) @page33 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - マジモンの名無しさん» ありがとうございます!これからも作品の腕を上げて参ります! (9月28日 21時) (レス) @page29 id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長庚 | 作成日時:2023年9月12日 22時