助けられた(コハクside) ページ28
私はただ、姉の湯治の湯汲むために、こちらに来たに過ぎなかった。
姉の病のために、何をすべきか分からず、尽くせることはないかと毎日行っている日課だ。
空は澄み渡っている。そういう日、私の目はよく冴える。
そこで、私は見てしまった。
一人の長髪男が、もう一人の男を手に掛け、葬ったところを。
その場にいたのは、5人。
男や、残された者達は、不思議な妖術を操っていた。
居ても立ってもいられなかった私は、せめてあの長髪男に、紳士使いの報復をしようと試みたのだが。
あっさりと負けてしまった。相手は互角どころか、勝負にならないほどの強さを持っていた。
更に長髪男に木の下敷きにされ、身動きも取れず、どうなるかと思われたのだが。
「部長、竹にも土詰められたよ」
「おお速かったな。それも組み立てっか」
そこへ通りすがり、二人の妖術使いが今、私を助けようと懸命になっている。
一体何者なのだろうか。
「これは……?」
私の頭上で、何やら不可解なからくりを組み立てていた。
私は訝しげに尋ねる。淑女妖術使いと紳士使いは、木に登って縄を掛けている。
「"科学"だよ。いち高校生のゴミみてえな力を怪力に変換する」
「現代人なら小中学校で習うね。滑車」
こうこうせい、しょうちゅうがっこうなどと、知らない言葉が沢山出てきて内容がよく分からない。
しかし、"科学"というもの、それは私にとってあっと驚かされるものだということが、身に染みて伝わってきた。
二人の妖術使いが木から飛び降りた時、私の力でびくともしなかった大木が、いとも容易く持ち上げられてしまったのだ。
「…………!」言葉を飲み込む私を横目に、二人はぱちんと手を合わせていた。
「成功だね。竹も壊れなかったし」
「あ゛ぁテメーに"土詰めの天才"の称号をくれてやるよ」
「いや、いらないよ」
この二人の、
これが、"科学"か……。
「素晴らしい」
「ん?」「あ?」二人は同時に呟く。私はその二人に告げた。
「その、一歩一歩問題解決へと楔を打ち続ける揺らがぬ信念がさ。
私の名はコハク。
私はその、君達の信念にめっぽう惚れてしまった」
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長庚 - ぽぽぽさん» お言葉物凄く支えになります、更新頑張らせていただきます! (10月6日 16時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - うおおおおおお!更新頻度高くてすごい助かります!!普通に話作るのうますぎて吐きそう!!頑張れええ!! (10月6日 0時) (レス) @page39 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - ありがとうございますー!実は風邪ひいてしまってですね……体調には気をつけます!(*`・ω・)ゞ (10月2日 19時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - んふふふふふふ。何これ面白い…可愛い…。体調に気をつけて更新頑張ってください! (10月2日 17時) (レス) @page33 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - マジモンの名無しさん» ありがとうございます!これからも作品の腕を上げて参ります! (9月28日 21時) (レス) @page29 id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長庚 | 作成日時:2023年9月12日 22時