何も出来ない ページ17
私が動けないのは、自分も殺されるという恐怖から来るものだろう。
「千空…できれば殺したくない。もう一度聞く。
今ここで誓ってくれないか。科学を捨てると」
司も本当は、部長には死んで欲しくないのかもしれない。
少しの間でも、共に過ごした人間として。
それでも、部長は言う。
「無理だな。それだけは」
やっぱり部長はそう言うんだ。
科学を裏切る、なんてことはしないんだ。
長らく沈黙が続いた後、司はゆっくりと悲しい笑いを浮かべた。
「……うん、君はきっとそう答えると思ったよ」
駄目だこれじゃあ、部長は本当に殺される。
「ククク……何寝言言ってやがる。どう答えようがどうせゆくゆくは殺すんだろうが。念のためな」部長は首もとを手でおさえて、ゴキリと音を鳴らした。
「…かもね」
「一撃でやれよ。だらだら血ィ流して粘んのは、お互い非合理的だろうが」
私は何をするべき……?何で何も出来ない?
それを問うばかりで、私の身体は動かない。
「心配ないよ。頸神経を一撃で砕く。瞬時に失神して死に至る。
苦しみは与えない。絶対にミスはしない」
怖い。
怖い怖い。今動いたら絶対殺される。
司は顔を上げた。
「千空……もしも俺たちが3700年前に出会っていたら……この星がストーンワールドになる前に出会っていたら…
初めての、友達になれたのかもしれない」
成り行きを呆然と眺めるだけになった私が見たものは、部長がさいごに、
私の瞳を、何かを託すような強い目で見たことだけだった。
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長庚 - ぽぽぽさん» お言葉物凄く支えになります、更新頑張らせていただきます! (10月6日 16時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - うおおおおおお!更新頻度高くてすごい助かります!!普通に話作るのうますぎて吐きそう!!頑張れええ!! (10月6日 0時) (レス) @page39 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - ありがとうございますー!実は風邪ひいてしまってですね……体調には気をつけます!(*`・ω・)ゞ (10月2日 19時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - んふふふふふふ。何これ面白い…可愛い…。体調に気をつけて更新頑張ってください! (10月2日 17時) (レス) @page33 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - マジモンの名無しさん» ありがとうございます!これからも作品の腕を上げて参ります! (9月28日 21時) (レス) @page29 id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長庚 | 作成日時:2023年9月12日 22時