ちょっと中々意味が分からなかったらごめんなさい ページ45
(時間軸的には"次に進むぞ"の次に当たります)
*******
夜の事だった。
俺以外の三人は既に就寝し、俺は外の月の光を頼りに、ある物を作っていた。
司がもし本物の悪代官のような奴で、こちらに危険が及ぶかもしれない、という場合のための武器だ。
もしかしたら使わないかもしれない。むしろ使わない方がいいが、念には念を入れる。
しかし本当にそうだとしたら、文明復興どころではなくなり、延々と対司を繰り広げる事になるだろう。
「まあ、そうだとしたら、の話なんかしても無駄か……」
「………部長?」上から声が聞こえた。
見上げると、Aが俺の顔を覗きこんでいた。
「!!A……テメー……」
「ん、何?」
Aは優しそうに笑った。
以前の部長呼びに戻っている。それにあのとてつもなく明るい印象もなくなっている。
一体何がしてぇんだ……。
「…………もしかして、私が何だか変になったっていうことについて聞きたい?」察しのいいAは俺の訊きたい事をしっかり汲んだ。
「あ゛ーそうだ。すげえアホの子になってたな。
何か理由でもあんのか」
俺が尋ねると、Aは言葉を選ぶようにゆっくりと言った。
「……………………。私が司の前で部長を"部長"と呼んだら、私が科学部所属だったってバレるでしょう?」
Aは唐突によく分からない事を言う。
「どういう事だ?科学部所属だったのが、司の前では不具合があるっつうことか?」
Aは目を細めて笑った。
「かもね。何だか司は、科学と、文明復興が気に入らない様子に見えたから。
だから司の前で"ただの明るくて無知の少女"になって、"科学が分かる少女"を隠すことで、警戒されないようにした。
……というか部長も実は司を不審がってはいるんでしょ?だってクロスボウなんて普通は作らないから」
手元にあるクロスボウ。
だいぶお粗末だが、十分なスピードは出る作りにはなっている。
「…………かもな。まあこんなんがあったところでなんだがな」
クロスボウは最後の切り札として使うつもりだ。
これが通じない人間はいない、と信じる他ない。
「司……悪い事をしなきゃいいんだけどね……」
「………………だな」
まだこの時は、司が本当にAの言う"悪い事"をしたなんて、知る由も無かった。
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作者名:長庚 | 作成日時:2023年8月29日 22時