過保護な手当て ページ32
「何やってんだテメー!!出血が止まんねぇなら圧迫するかとりあえず拳上なんて基本の基本だろうが!!」
ただいま私は、絶賛部長からお叱りを受けている。
「分かったから分かったから、ヨモギ取っていい？止血するから」腕を高く上げながら訊いた。
「言いわけねえだろ!その血がついた手で採ってきたやつ触んじゃねえぞ!!」
「じゃあどうするのー？」
「俺が取るしかねえだろ!!」
部長はヨモギを籠の中から見事探しだし、私の手の腕を掴んで傷口にそれをぎゅっと押し付けた。
「ちょっ、痛い痛い痛い！押し過ぎじゃない？部長？何か恨みがあるのー？部長ー!?」
「血ぃ止めてえんだろ、我慢しろ！」
どうやら恨みはないらしい。
というか、なんだか前にもこんなふうに部長がわーわーしていた時があったような気がする。
「にしても、部長は過保護だね」
あははっと笑ってみせると、部長にじとりとした目で見られた。
「で、何してたんだテメーは？」
私のコメントをさらっと無視して部長が迫ってくる。
(むむむ………)
なんだか面倒なので、白状することにした。
「………チップを作ってたんだ」
「チップ？」
「その……燻製やろうかなと思って。その……ごめんね」
「なんで謝んだよ」部長は私の腕を圧迫するのをやめた。
血は既に止まっていた。
「こういうのは、何となく謝れば皆許してくれるって心得ているからね」
さっきまで眉間にシワを寄せていた部長は、少しため息をついてから、言った。
「別に悪いことなんてしてねえんだから、謝んなくていいだろ。燻製なんてもんはな、今のストーンワールドじゃ煙当たって燻されてりゃいいんだよ。
それをわざわざチップ入りの大層気合い入った様でやるテメーの好奇心にゃ驚くわ」
それは、誉めてくれているのだろうか？
「あ、ありがとう……？」
「1ミリも誉めちゃいねえよバカ」
「ええ……」
私の反応に笑いながら、懐から携帯用の刃物を取り出した。
「まあ俺も今のノルマは終わってっからな。手伝ってやるよ」
………………
は…………。
私は今どんな顔をしているんだろう。
念入りに枝を薄切りにしている部長を見ると、なんだか微笑ましい気持ちになる。
「…………やっぱり部長は過保護だね」
「あ？俺が暇で何もしねえのは非効率ってだけだ」
「…………………そっか」
私は笑った。
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作者名：長庚 | 作成日時：2023年8月29日 22時
