何これ甘酸っぱい ページ22
私の急な声の大きさに、部長は目を大きくした。
「そんなの嘘、性格変わったなんて、きっと嘘、本当は、私、」
声が震えている。
石化を破って、目が見えて、辺りは緑ばかりで。
部長を初めて見て、部長だってわかったとき、普通にイケメンだな、って思ったなんて言えない。
だけど、
「部長に一番会いたかった、よ…」
言えた。言いたいことが言えた。
もう怖いことも怖がることもないんだ。
私は一人じゃないって分かったから。
そしたら急に何かがせりあがってきて、でも涙を見せるのはさすがに格好がつかない、と思って、下を向いた。
「……………A」
「……何」
「…来いよ」
そういって部長は腕を広げてみせた。
何を…?
━━抱きしめてもいい?
最初の時、さっきそう部長に言ったんだ。
…………っ!
「う゛っ、うわあぁあああん!部長ーー!!寂しかったよーー!!」
「うおっ!?いきなりそんな飛び付かれたらびっくりすんじゃねぇか!!」
そんなことお構い無しに続けた。
「もう、二度と会えないかと思ってた」
「!!」
「3700年も待って、耐えて、でも本当は、誰にも会えないんじゃないかって、もうずっとこのままなのかって思って、」
「………あぁ」
「もう寝ちゃおうと思った。知識ばっかり振り返って、今の自分の気持ちとか、忘れちゃったんじゃないかって思った」
「…そうか」
「でも石化がとけるまで、ちゃんと待てた。私、待てたよ。今も生きてる。部長が見えてる」
「あ゛ぁそん通りだ。あの暗闇で3700年も、よく耐えたもんだ。やるじゃねぇか、万里」
部長は別に抱きしめたんじゃなくて肩を貸してくれているだけだった。
でも、そっちのほうが部長らしかった。
部長の不慣れな様が、すごく暖かく感じた。
人肌は暖かい。なぜかすごく安心できる。それに…
すごく……………眠くなるんだな。
そう思いながら、急に襲われてきた眠気に負けてしまったのだった。
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作者名:長庚 | 作成日時:2023年8月29日 22時