かつての想い ページ21
部長が私の顔を覗きこんだ。
近い。
「近い」
「なんつーか…A、性格変わったよな」
私の言葉をガン無視で部長は続ける。
「……そうだね。変わったって、自分でも思ってる」
本当に自分でも、部長に冷たくなったと、会ってたった短時間なのに、思った。
でももう、人に暖かく接することがよく分からないのだ。自分が起きることに精一杯で、そんなこと考える暇なんて無かったんだ。
もはや石化前のことなんて、覚えているかわからない。そう思っていた。
「最初に会ったときは、泣いてただろ。なんかあったか」
「……………」
正論を突かれた。
……………。
………………………。
急に何なんだ。
労働力が大好きな部長だというのに、私の心に関わろうとするのは？
何でこんなに口が悪いんだ。
「石化中…寂しかったからか」
「……………………」
何でこんなに口が悪いくせに、
「3700年っつう時間は長かったな…」
何でだって部長は、実はすごくいい奴で、優しいんだろう。
私は何も答えない。
もしかしたら、
感情がどうこう、わからない、なんて嘘で、
ただ心の中にそれをずっとしまっていたかっただけで。
そうなるのは、はやく誰かと繋がりたいということを、そう思っても出来ないんじゃないかって、怖かったからなんじゃないか。
知識を何度も網羅したのも、もしかしたら、本当の気持ちが暴れないように、抑える為だったのではないか。
そう思ったら、全てがわかった気がした。
そうだ。
石化中、本当は、ずっと…
「あぁ もしかしてあれか、石化がとけて、一番最初に会ったのが俺だったのが最悪の状況だった、みてぇな…」
「そんな」
きっぱり言った。
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作者名：長庚 | 作成日時：2023年8月29日 22時
