バレる。言い訳を考える ページ19
急に背後から声が聞こえて、私は少しぎくりとする。
後ろで部長が私を見下ろしていた。
「あ…部長…」
私としたことがやってしまった。
どんな言い訳をしようか。
そう考えていると、部長はふいにふっと笑った。
「んだよ、そんな青くなって。別に怒っちゃいねえよ…
ただ寝不足でぶっ倒れられると困るからな」
「………………」
その言葉に一瞬呆けて、はっとなった。
「…ああ、そうだね。私が倒れたら労働力が減るもんね」
なんだか部長の合理性に少し苛立ってきた。
部長はやはり、何も労働力とかしか数えないのだろうか。
「…別に気持ちの問題もあるけどな」
部長は言った。
「…気持ちの問題って何」
ああ困った困った〜って事か。部長は本当に合理的なものが大好きだからな…。
「さあな、そのくらい、自分で考えてみやがれ。俺から言うのも、らしくねぇからな」
「………？」
何が言いたいかよくわからなかったが、私の思った事とは違いそうだった。
「ほれ、麻だ」部長はこちらに麻をほぐしたものを寄越してくれた。
「あ、うん」
もう一度弓を持ち直し、前後に引いた。
再び現れる白い煙。
器用さがあるのは素晴らしいと感動できるほど速くできた。
弓を外し、いそいそと出来上がった火種を麻に投入する。
そこに思い切り息を吹き掛けていると、部長が慌て出した。
「って、Aテメー!燃料くらい出してからやれ!そのまま火がついても入れる場所ねえじゃねえか!」
そういえば忘れていた。
まあ部長が何とかしてくれるだろう。
そう思いながら息を吹き続ける。
部長はツリーハウスから、そして自分が採ってきていた枝や薪などを薪くずがあったところに並べていた。大分お急ぎだ。
吹き続けていて、何だか熱いなと思ったら、火が点いていた。
「!!あつっ…部長、準備…」
「って、火が点いてんじゃねえか!!速くこっちによこせバカ!!」
私は枝が積み重なったところに、それを放った。
バチバチと音をたてながら、枝が炎を上げた。
「……………!」
その炎の色から、目が離せなかった。
「ったく、火が点いたはいいが、テメー危なっかしいことすんなよ…」
「………」
綺麗だ。部長の瞳の色と同じくらい真っ赤。
「万里？」
「……うん、ごめん。もうしないよ」
私は顔を伏せて言った。
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作者名：長庚 | 作成日時：2023年8月29日 22時
