寝られる訳がなかった ページ18
部長は私の目をじっと見ていた。
目を逸らすのも可哀想な気がするので逸らせないのが気まずい。
「何?」
「いや…テメー睡眠不足か?」
部長は私の目の下にあるであろう(鏡がないからわからない)クマ見ていたようだ。
「こんな状況で寝られる人の方がおかしいと思うけど」
「俺はちゃんと7時間寝たぞ…まあいい、Aは寝てろ。俺が飯テメーの分も準備してやっから」
思いがけない言葉に私は目を丸くした。
この人からこんな言葉、出るんだ。
「いやいいよ。部長が二人分も準備したら大変だし、」
「そりゃ俺を舐めすぎだろ…二人分になったところで、そんな変わんねぇよ」
部長は私の言葉に呆れながら言った。
少しディスったような言い方をしてしまったようだ。
しかし部長はそんなことを気にする間もなく
「おら早く寝て、早く起きてこっち来いよ!」
と私を布団がたまっている所へ追いやった。
「この布団部長のじゃないのか…」
人の布団で寝たことはないので、変な感覚だ。
しかしこんなものは布団もクソもないくらいだから寝心地はよくなさそうだ。
「う…ん。寝られる訳ないか」
布団に入って、目を瞑っていたがダメだった。
部長には悪いが、寝られない。
というか、今寝ると夜に絶対に寝られなくなる。
「やっぱり起きてよ…」
私は梯子を下りて、近くの薪くずがあるところに来た。毎日ここで火を焚いているのだろうか。
部長はいない。採集に行ったのだろう。
…ここで火を起こせばいいのか。
そういえばさっき寝床の近くに小さな弓のようなものが置いてあったのを思い出した。
もう一度ツリーハウスの中に戻ると、案の定それは前と同じように鎮座していた。
「…これが弓切り式の弓か…。借りよ」
私は弓と木の板をひったくり、薪くずのところへ持っていった。
木の板の上に棒、弓、糸をセットして、弓を素早く動かした。
数分後には、かすかに白い煙が上り、そこでようやくあることに気付いた。
「あ、火種を入れるものがない」
「寝てろっていったじゃねえか」
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作者名:長庚 | 作成日時:2023年8月29日 22時