探索 ページ14
翌朝のことだった。
服を裁断したら手をすっきり切ってしまった。
石を削っただけだというのに、刃物とは恐ろしい。
絆創膏なんてないので、水で洗っておく。
寝られなかったとは言っても、１、２時間は眠れた。
慣れない裁縫で苦労しながら、なんとか服を縫い上げた。
「……。これが私の一張羅か…」
出来はまあまあ、すごくまあまあだ。
何のデザイン性もない、半袖長(?)ズボン。
それでも、衣食住の衣を確保できた。
次は住。
といきたいが、食を探しながら、生存者がいるかを確認する。
辺りを念入りに散策すると、少し広いところに出た。
目の前に、大きな木が立っている。
この木は何歳なのだろう？
「…年輪の長さの平均は…直径は大体…」
石化前、この辺にさほど大きい木はなかった。
そしてさっき計算した樹年齢はおよそ4000歳、石化前の樹年齢はわからないが、だいたいその辺だろう。
そして、
「……もしかして…杠」
杠は小学生のころからの仲なので、昔の姿は覚えている。
その面影が、そっくり重なって…。
杠も…石化したんだね。
皆…どこにいるんだろう…。
ふとそこで思いつき、この木に登る。
体力はないが、器用さと技術は自信があるので、登ることは苦労しなかった。
木の上は涼しい。葉の音が涼しげなだけかもしれないが。
風の匂いもすごく青らしく、空気がおいしい。
「はぁ…って、ん、なんか煙の匂い…」
よく息を吸い込んでみると、微かに煙たいような匂いがする。
その方向を見る。が、木の葉が邪魔で、ほとんど何も見えやしなかった。
私は急いで樹からおりた。
人がいるかもしれないと、ようやく期待を寄せてしばらく歩いた。
しかし、人が住んでいる形跡や様子が見えてこない。
やっぱりないのかな…。
やはり戻ろうか、と思ってから、住んでいる場所もないことに気付いた。
…それならもう少し探しても別にいいか。
持ち直して、周囲を探索する。
「……！」
森の中で周りから見ても少し開けた場所に出た。
その近くにある木に、釘付けになった。
そこには、不恰好なツリーハウスが建っていた。
木をならべてつなげて造ったような直方体に扉がくっついているような感じだった。お世辞には上手と言えるくらいには、建物だった。
「………誰が…？」
呟いた直後に、近くで、ガサゴソと葉の擦れる音が聞こえた。
「………!」
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作者名：長庚 | 作成日時：2023年8月29日 22時
