科学と私と缶詰と3(回想) ページ13
私は今、科学部の部室、つまり理科室に向かっている。
それにしても、「白衣があったらくれ」って、どういう意味なんだろ?
さっき千空くんから電話が来て、そう言っていた。
その後もAちゃんから「お土産まだ少しあるから、食べに来てね〜」みたいなメールをもらった。
それにしてもどんなお土産だろう?食べ物って言ってたし。
少し楽しみだなぁ。
なんて思いながら理科室の前の廊下に到達した。
「ん?いつもドアは開いてるのに、珍しいですな…」
いつもは実験で気体が発生したりするから、大体ドアや窓は開いている。
今日はそういう実験じゃないってことかな?
まあいいか。入ろ。
軽くノックをしてから、ドアを開いた。
「失礼します。千空くん?白衣持ってきたよ……って……ッ!!!?」
私の鼻の奥まで、突き刺すようなにおいが襲ってきた。
不恰好にも私は鼻をつまみながら、理科室に入る。
ベランダの前の扉が全開に開いていて、周りに散らばって座り込んでいる人達に目をやる。
理科室のドアをきっちり閉めたのを確認してから、皆に駆け寄った。
「だ、大丈夫ですか…?」
「あっ、杠?来てくれたんだ」
私の声に気づいたのか、Aが手を振った。
Aさん…このにおいの中、よくそんな平気でいられますな…
本当に臭い。においのもとであろう缶がベランダに置いてあったのが幸いだった。
これ本当に食べ物?
「せ、千空くんから、白衣を持ってきてって言われててね、持ってきたよ」
と言うと、ベランダの外から千空くんがぬっと出てきた。顔が何かを物語っている。
あの千空くんが、大分憔悴しているなんて…。
「あ゛ー、おありがてえ…杠。もうこの白衣は死んだな、においが取れそうにねえ。ったく、覚悟はしてたが、予想以上に…う゛っ」
千空くんが瀕死状態だ。白衣を渡す前に倒れてしまった。
千空くーん!!
「ねえ、何食べてるのさっきから!?」
あははっ、とAはいたずらっぽく笑った。
「シュールストレミング。俗に言う、世界一臭い食べ物だよ」
*******
回想めっちゃ長くなりました。すみません。
次から普通に本編です
78人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「女主」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:長庚 | 作成日時:2023年8月29日 22時