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両手を差し伸べてくるので、それを掴み取って引き上げる。心底嫌そうな顔をするので、背中をポンと優しく押してあげた。
「帰ってきたらお誕生日のお祝いしましょうね」
「……向こうついたら電話かけていいですか？」
「出れるかわかりませんけど、連絡くれてたらなるべく時間作りますよ」
まるで小学校に行きたくない子供を宥める母親の気分で、玄関に渋々向かうAさんの後ろを追っていった。俺の職業が声優だと分かってから、やりすぎなんじゃないかと思うくらい何かと気を遣ってくる彼女だったけど、最早そんな余裕はないらしい。
ちっぽけな我儘だと思いながら、玄関で靴を履いたAさんにカバンを差し出した。唸り声で受け取った彼女に、「いってらっしゃい」と笑いかけた。
唇を尖らせながら、「いってきますよ、もう……」と呟く姿は、まるで駄々っ子のようだった。
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『おばあちゃんからの結婚しろという圧力も、弟の言い草も、田舎も近所の人も、全部全部大っ嫌いですけど、でもちょっとだけいいところも見つけましたよ』
『ほぉ〜！それは良かったです。青森はやっぱり、空気綺麗ですか？』
『澄み切ってましたし、なんだか……静かというか、穏やかでした。星も見えましたし』
ベランダでにもたれかかりながら、ハイボールの缶を片手に携帯を耳に当てていた。目の前のガラス扉からは、カオス極まりない自宅が瞳に映し出されている。
江口さんの腕に噛み付く花江くん。それを携帯をいじりながら爆笑してる梅ちゃん、にまとわりつく壮馬くんと、「やめなよ〜」とまるで思ってもないことを言うしょーたん。カオス。
目の前の惨状に苦笑いをしながら、ほろ酔い気分で「楽しくやってますか？」と尋ねた。
「うーん……それなりに、思っていたよりかはマシでしたけど。西山さんと居る方が楽しいですね。やっぱり」
「また不思議なことに、僕もなんですよね」
お酒が回っているからだろうか、要らないことまで口走る俺の耳に、クスクスと笑い声が聞こえた。
嘘はついてない。Aさんが青森に旅立ってからの静かさといったら、逆に気色悪くなるほどだった。前まではこの代わり映えない落ち着いたのが日常だったけれど、いつの間にかAさんと色々やらかすへんてこりんな日常に慣れてしまっていた。初日の晩に、テレビを見ながら一人ビールを飲んで、初めて出会った日のことを思い出すくらいにはセンチメンタル。
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まほろ(プロフ) - morさん» 気付くのが遅くなってしまいすみません…。沢山褒めていただいて、私もモチベーションが上がりました（笑）これからもどんどん西山さんと一宮さんが仲良くなっていくので、是非完結までお付き合いください！ (2021年12月21日 7時) (
レス) id: 0871b431d8 (このIDを非表示/違反報告)
mor(プロフ) - 文章を書くのが上手すぎます…！！あとラジオの相槌の感じ（あの、とかを入れるタイミングとか）が絶妙すぎてめちゃくちゃ感情移入できます！！こんなに面白い小説久しぶりに出会いました、これからも応援しております！！ (2021年12月18日 1時) (レス) @page21 id: 06bc4acfa5 (このIDを非表示/違反報告)
まほろ(プロフ) - きゃらめるかも。さん» 素敵なコメントありがとうございます〜！これから長い長い物語になりますが、ぜひお付き合いくださいませ！ (2021年12月15日 7時) (レス) @page9 id: 0871b431d8 (このIDを非表示/違反報告)
きゃらめるかも。 - めちゃめちゃ面白いです！！ゴキブリの話とか！笑、その発想はなかったのでビックリしました！これからも、お体に気をつけて頑張って下さい！😆 (2021年12月14日 14時) (レス) @page4 id: 242d71ebf1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まほろ | 作成日時：2021年12月14日 7時
