Catch yours !!! 【西山宏太朗】

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そんな衝撃的な初対面を迎えてから、二度も見ていない一宮さんがある日廊下でスキップをしていた。ギョッとした。2、3週間ぶりの対面である。

ちなみに前の紙破き騒動及びゴキブリ騒動があまりのインパクトの強さで、ラジオ収録2回に分けて、噂の隣人の話をした。最早ここまで来るとネタと化していて、Twitterでは、【ここまでくると事故物件www】や【闇が深い】などと言われている。こんな形で自分の危機管理能力の正常さを再確認するとは。


そんな、若干というか、大分おかしくなってしまっている隣人が、スーツ姿でそれはそれはまるで楽園にいるかのようにスキップをしながらビニール袋を振り回していたら、無論込み上げる感情は恐怖一色だ。ついに頭のネジが吹っ飛んだか。あまりのことに驚いてしまって、後退りをした。その時に靴音がなってしまったのは不覚だった。僕に気づいた一宮さんは、「あら！お久しぶりですね〜」と張り付いた笑みを浮かべた。


「お久しぶりです……あ、あの、お元気そうで何よりです」

「あ、元気そうに見えます〜？私もまだまだ若いんだなぁ」

「いえあの、そういうことではなくてですね」

「わかってますよぅ、西山さん気づいちゃったんでしょう？私がテンション高いってこと」


逆にこんなに公共の廊下でニヤつきながらスキップをしている人が、明日死ぬかもしれない病を抱えているなんてことがあったら、驚いて僕は何も言えなくなるだろう。


よく見れば目の下に刻まれた濃いクマ、そして脱力感と解放感に溢れた彼女は、云々思考を巡らせる僕をさて置いて「私、今日から二連休なんです〜！」と意気揚々と言った。
よもや、ベランダでブツブツと恨みつらみを呟く彼女とは思えない。けれどどれだけテンションが高かったとしても、ひしひしと滲み出ている闇深さと悲壮感に若干引きながら、「お、おめでとうございます」と言った。


「久々にうるさくしたらごめんなさいね」

「あぁ、いえ全然」


訳の分からないハイテンションさに未だに少しばかり恐怖を覚えながら、足早に自宅の扉を開ける。そうか、一宮さんは二日間だけいるのか、となんだか不思議な気分だった。
彼女が一日家にいることなんて覚えている限りだと数えるほどしかないし、深夜に帰ってきて朝方に出ていくそんな彼女が、二日間も家にいるのはまさに西山的歴史を塗り替えるようなものだ。



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