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「一宮さん、そんなに難しく考えるようなことでもないと思うんですよ」

「難しい話ですよ!出会いを捏造するなんて」

「いやいや、よく考えてください。捏造するにしてもこんな、今時ハンカチ落として拾ってもらって、ロマンスなんて始まります?あ、ありがとうございますで終わりますよ」

「ウッ……そうなんですよ。世知辛いんですよね、世の中」

「素直にね、隣人同士で知り合ったってことにすればいいじゃないですか。ただ、僕たちはお互いの呼び方が変わるだけ。Aさん、でどうですか?」


この世知辛い世の中じゃ、ハンカチを落としたり肩がぶつかったりくらいなんかじゃ、ロマンスは始まらないし、社会人ともなると、共通の友達からのロマンスも考えにくい。そもそもこの人社畜だったし。
ただそんなご立派な出会いなんて考えずに、飾り気のない出会いの方が案外そのまま受け取ってもらいやすいのではないか、と一表現者の俺は思うわけだ。

結果から言うと、一宮さんのお母さんはいい人だった。宏太朗さん、Aさんとして前線に出た僕たちを「お似合いね」と笑っていただいた時には流石に罪悪感を少し感じたが、とにかくハラハラドキドキだった。
一宮さんが「西山さん」と口を滑らせた時には、一瞬時が止まったかのような気がしたが、僕の芝居もあってなんとか切り抜けた。あの瞬間が一番、正念場だったんだろう。


「助かりました、お礼します今度」

「期待しときますね」


笑いながら言って、夕飯のグラタンを口に入れた。一宮さんのお母さんが帰る前に作ってくれたそれは、母さんのグラタンとはまた違う、優しさの味がした。
目の前で「お母さんの得意料理はグラタンなんですよ」とはにかむ彼女に、ふと、思ったことを呟いた。少し驚いた顔をした彼女が、すぐに笑顔に戻って「わかりました、宏太朗さん」と言ってくれた。


「これからも、うまくやっていきましょうね、Aさん」

「ええ、せっかく呼び方も続行しますしね」


このまま、お互いのことを名前で呼びませんかと言う僕の提案は、あっさりと当たり前かのように、一宮さんに吸収されていった。



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まほろ(プロフ) - morさん» 気付くのが遅くなってしまいすみません…。沢山褒めていただいて、私もモチベーションが上がりました(笑)これからもどんどん西山さんと一宮さんが仲良くなっていくので、是非完結までお付き合いください! (2021年12月21日 7時) (レス) id: 0871b431d8 (このIDを非表示/違反報告)
mor(プロフ) - 文章を書くのが上手すぎます…!!あとラジオの相槌の感じ(あの、とかを入れるタイミングとか)が絶妙すぎてめちゃくちゃ感情移入できます!!こんなに面白い小説久しぶりに出会いました、これからも応援しております!! (2021年12月18日 1時) (レス) @page21 id: 06bc4acfa5 (このIDを非表示/違反報告)
まほろ(プロフ) - きゃらめるかも。さん» 素敵なコメントありがとうございます〜!これから長い長い物語になりますが、ぜひお付き合いくださいませ! (2021年12月15日 7時) (レス) @page9 id: 0871b431d8 (このIDを非表示/違反報告)
きゃらめるかも。 - めちゃめちゃ面白いです!!ゴキブリの話とか!笑、その発想はなかったのでビックリしました!これからも、お体に気をつけて頑張って下さい!😆 (2021年12月14日 14時) (レス) @page4 id: 242d71ebf1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まほろ | 作成日時:2021年12月14日 7時

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