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「復刻、西山ニュース」


軽快な音楽とともに、梅ちゃんが「ひとつでいいですよ」と言った。今日はとっておきのネタがある、ということで、マイクに向かって一言「恐怖体験」と呟いた。


これは僕の、ちょっとした恐怖体験の話だ。


「あのですねー、僕結構前なんですけど引っ越したんですよね」

「はいはい」


契約更新をせずに、新居に移った僕は、隣の角部屋の人を見たことがなかった。引っ越しの挨拶も、一週間毎日行っても不在だった時には、居留守されてるのかもななんてショックを受けたけど、後々本当になかなかいらっしゃらない人なのだと大家さんから聞いた。

人気のないその角部屋は、本当に人が住んでいるのだろうかと時々思わせた。それでも、玄関に表札はしっかりとあって、もしかしたら別荘だったりするのかな、とか長期出張?なんて考えていたりした。


男かも女かも、どの年代なのかも何もかもが当たり前にわからない隣人に、自分の中で妄想を繰り広げていたわけだ。


「僕ね、ベランダに出るんですよ、夜。めちゃくちゃ涼しくてのんびりするのが好きなんですけど」


いつものように、ベランダに出て、いつもの椅子に座って、少しお酒を嗜んでいた時だった。隣からブツブツと、小さな誰かの喋り声が聞こえた。


「で、なんだろうと思って、耳をすましたんですよ。そしたらなんか、「あー、会社明日潰れないかな」とか、「あのハゲを殺すのが先か過労死するのが先かだよなぁ」とか。ずぅぅぅとそんなことばっか言ってて」


今でこそ笑い話にしているものの、その時は心底ゾッとした。ブツブツと声が聞こえた時は、一瞬お化けかと思ったけれど、やっぱり一番怖いのは人間だと思う。
確かに人間の声で、思う存分がままに仕事への鬱憤を一人で呟く隣人は、少なくともベランダにいた15分は常に何かを言っていた。


「それは流石に怖いねぇ」

「いや今でこそ笑えるけど!!めちゃくちゃこわかったからね?!」



目の前のマイクの前で笑う梅ちゃんに、恐怖体験の全貌を手短に伝えた。圧倒的他人事の梅ちゃんは若干面白がっていたけれど、僕としては割とちゃんと怖かったことなわけで。
こうも自分の真横でずっと負の感情が繰り広げられていると、人は思わず怯えるものなのだ。




さて、前置きはここまでとして本題に入ろう。

これはそんな隣人とのお話なんだから。



サプライズな出会い→



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まほろ(プロフ) - morさん» 気付くのが遅くなってしまいすみません…。沢山褒めていただいて、私もモチベーションが上がりました(笑)これからもどんどん西山さんと一宮さんが仲良くなっていくので、是非完結までお付き合いください! (2021年12月21日 7時) (レス) id: 0871b431d8 (このIDを非表示/違反報告)
mor(プロフ) - 文章を書くのが上手すぎます…!!あとラジオの相槌の感じ(あの、とかを入れるタイミングとか)が絶妙すぎてめちゃくちゃ感情移入できます!!こんなに面白い小説久しぶりに出会いました、これからも応援しております!! (2021年12月18日 1時) (レス) @page21 id: 06bc4acfa5 (このIDを非表示/違反報告)
まほろ(プロフ) - きゃらめるかも。さん» 素敵なコメントありがとうございます〜!これから長い長い物語になりますが、ぜひお付き合いくださいませ! (2021年12月15日 7時) (レス) @page9 id: 0871b431d8 (このIDを非表示/違反報告)
きゃらめるかも。 - めちゃめちゃ面白いです!!ゴキブリの話とか!笑、その発想はなかったのでビックリしました!これからも、お体に気をつけて頑張って下さい!😆 (2021年12月14日 14時) (レス) @page4 id: 242d71ebf1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まほろ | 作成日時:2021年12月14日 7時

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