らくだい魔女と星雲の雫 (ページ30)

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☆サクリファイスとドゥームの意味ページ30

キラside

　ドクン、ドクン…

　あたしは、妙なこの空間を見つめながら、胸を押さえる。

　こんな苦しい空間は初めてだ。

　いつも美しく輝く、女王の間。

　しかし、クリスタルはどこか黒ずんで見えて、不安を生んでいた。

　あたしは、クンと匂いを嗅ぐ。

　甘い魔香の香り以外に、二つの香りがした。

(これは──)

　魔香よりも強く、キツい甘い香り。

　もう一つは、爽やかな草原の風を思わせる香り。

　この香りは……。

(まさかっ)

　そんなハズはない。

　あたしは、鼻を押さえながらドゥームを見る。

　コイツが本当にドゥームなら。

　もう一人、確実にここにいる。

「サクリファイス…」

　あたしは言った。

　カイトがあたしを見る。

　絶望に満ちた瞳の色だった。

　苦しい胸を強く叩き、あたしは立ち上がった。

　と同時に、レンくんがドゥームに向かっていく。

　怒りに燃えた炎の鉄拳が、ドゥームへ──。

　しかし、ドゥームは動揺することもなく、物凄く速いレンくんの拳をかわした。

「なっ、紙一重でかわしたっ」

　レンくんが目を見開く。

　ドゥームは体を捻り、左足を思い切りあげる。

　その足がレンくんの顎に思い切りあたり、レンくんは苦痛に顔を歪めた。

　さらにドゥームは、左足をレンくんの首の後ろに回し、床に深々と、レンくんをかかと落としをしてうずめた。

「！」

　カリンは口を押さえて、チトセは拳を握りしめる。

　フウカは顔を真っ青にして、カイトはドゥームを強く睨む。

　あたしは僅かに、肩を震わせた。

　惨い、攻撃の仕方。

　しかも、魔法を使っていないというのにあの身のこなし、攻撃力。

　あたしは足に力を込めた。

　すると、女王の間に、もう一つの声が響きわたった。

「ドゥーム。なんだこりゃあよ…。おもしれぇことになってんじゃねーか」

　ドゥームの真横に、一人の男が現れた。

　身の毛のよだつ笑い声をあげながら、男はニィ…と口角をあげる。

　ゾワっと鳥肌がたった。

「……破壊の悪魔・ドゥームと、犠牲の悪魔・サクリファイスね？」

　あたしはそう言って、二人を睨む。

　ドゥーム…悪い運命、破壊。

　サクリファイス…生贄、犠牲。