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29-1:逸話 ページ41

ナイトレイブンカレッジのある場所の廊下で生徒の話声が聞こえてきた。

「図書館の奥に禁じられた部屋あるの知ってるか?なんでも、あの小説家の魔法使いが書き残した小説の原本があるらしいぜ」

なんでもない至って普通の会話。生徒の言葉に隣にいた生徒も反応を示す。

「まじ?俺あの魔法使いの小説大好きなんだよ!」
「俺も。絵本になってるやつ小さい頃よく読んでたなぁ」
「でも、そんな話今の今まで聞いたことなかったぜ?」

本当の話かあ?と疑う生徒も無理はない。ツイステッドワンダーランドでグレートセブンと同等に尊敬される、あの小説家の魔法使いの本だ。そんなものがあればテレビで見かけるくらいはしただろう。

「なんでも、あの司書が厳重に守ってんだと」
「へえ。あの学園長なら食い付きそうなもんだけどな」

二人の会話を微かに聞き取った木漏れ日が差す木の下。その景色はまるで絵画のようだった。

アズ「………Aさん。ここで何してるんですか」
『……ん?ああ、アズールにジェイドじゃん。何してるの』
アズ「今、僕が聞いたんですけど……」

何をしていたか……昼食終わりに、シルバーの昼寝に付き合っていた。それだけだ。

アズ「ま、まあいい。もうすぐお昼が終わりますよ」
『あ、もうそんな時間かぁ。シルバー起きて、もうお昼終わるよ』

メガネのブリッジをあげるアズールに言われ、こちらに寄りかかっていたシルバーを揺する。が、まだ夢の中にいたいようだ。
その様子を見てアズールが、人が集まる前に解散してください、と付け足す。

『人……?確かになんか賑わってるな、とは思うけど』
ジェイ「おふたりの黄昏ている姿が、とても絵になっていますからね」
アズ「集客力があるんですよ、この空間」
ジェイ「ええ。御伽話のようです」

こちらを見て、少々嘘くさい笑みを浮かべるジェイドにAは笑い返して小声で呟く。

『……まあ、僕、御伽話出身だからね』
ジェイ「おや。何かおっしゃいましたか?」
『いや。シルバーで御伽話でも書けそうだなと思って』
ジェイ「確かに。どこでも眠るシルバーさんを題材にすれば面白いお話ができそうです」

中身のない会話をにこやかに交わす二人。その姿をアズールは気味が悪そうにみている。

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作者名:いす | 作成日時:2022年2月7日 18時

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