24-1：美しさに性別は関係ない ページ19
頭の後ろに手を当てて廊下を歩くラギーとその隣を歩くA。
Aは久しい、この体特有の重みに慣れてきたところであった。
ラギ「災難だったっスね〜」
『相変わらず逃げ足の早いハイエナめ…』
ラギーはAと歩くといつも多くの視線を感じているのだが、今日は一段と周りの視線を集めている。
視線の理由は被った薬品に関係あるのだが…
ラギ「まだちょっと薬品臭いなぁ」
『ラギーとは違ってね』
ラギ「Aももっと気を付けて行動するべきっスよ」
魔法薬学の授業で、薬品から目を離していたオクタヴィネル寮生が誤ってAにぶち撒けてしまった。そして側にいたラギーは俊敏に危機を回避したのである。
ラギ「にしても…」
Aの体を上から下までじっくりと見ると、顔をニヤつかせる。
ラギ「全っ然変わんねぇ…！」
目に涙を浮かべて肩を揺らし始めた。
『ま、僕の美しさに性別は関係ないからね』
ラギ「自信やばっ！」
もはやどんな事にも笑だすラギーにAは「なんだこいつ」と内心で悪態を吐きながら、後ろから近付いてくる足音に意識を向ける。
アズ「Aさん！すみません、ウチの寮生がご迷惑をお掛けしたみたいで！」
フロ「ビーバーちゃん、大丈夫ー？」
ジェイ「性別が反転する薬品がかかったそうですが、体調はいかがですか？」
心配だ、と顔が主張している。主張し過ぎて胡散臭いオクタヴィネル三人衆。
『な、なんでしょう…』
アズ「おやおや。そんなに警戒なさらないで下さい」
ラギーを見習って一歩引いたAを逃すまいと、いつの間にか後ろに回っていたジェイドが道を塞いでいる。
アズ「オクタヴィネルの寮長として謝罪させて下さい」
『いえ、結構です』
アズ「ではお詫びとしてモストロラウンジにお越しください。ご馳走します。よろしければ、ラギーさんも」
アズールの最後の言葉に、少し離れたところにある毛並みのいい耳がピクピクっと動く。
ラギ「俺もいいんスか！？A、これは行くっきゃない！」
『ちょ、ラギー？！』
瞬く間にスッとAの肩を組んだラギー。
アズ「ラギーさんにもご心配とご迷惑をお掛けしましたから」
ラギ「そうっスよ〜。近くにいた俺にまで薬品掛かりそうだったし、Aのことも心配で心配で…」
『ラギー？』
先程までケロッとして、なんなら迷惑を被るまいと距離を空けようとしていたラギーが、涙を浮かべてシュン…と耳を垂らしている。
Aはそんなハイエナをジトっと睨む。
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作者名：いす | 作成日時：2022年2月7日 18時
