窓の外_ko ページ4
少し開けた窓から入ってきた、五月の爽やかな風が頬を撫でる。
キャンパスには徐々に大学に慣れ始めた一回生達が、属しているインカレやバイトなどの話を楽しそうにしながら次の授業に急ぐ。
僕はそれを図書館の窓際のテーブルから眺めつつ、小さくため息をついた。
持ってきたクイズの問題集には、ここ十数分シャーペンを走らせてない。
この時間にこの席を陣取るのは、最早習慣化してしまった。火曜日、午後三時十五分。
彼女はこの時間、前の授業が終わった後、二号館への行くために図書館の前の細道を歩く。僕は、この瞬間の彼女を見たいがために、一時間前からここにいる。
同じ学部の同期で、昨年ミス東大の準グランプリに輝いたAA、さん。
学部は同じとは言え、五十人弱も在籍していれば、話しかけたこともない人もいる。
僕も彼女も、交友範囲は限られていた。一般教養のクラスも去年はいくつか被っていたが、専攻分野が決まるにつれ、選ぶ授業の傾向も変わってきた。
熱心な彼女は大体教室の前から三列目に座り、僕はその斜め後ろから、注意深く彼女を観察する。
授業中にうつむいて考え込む姿、少し複雑なトピックに果敢に意見を述べる姿、６限目に少し眠たい瞼をこする姿、どれも少し離れたところからだったが、僕の目には彼女だけが、セピア色の大学の中で色鮮やかに見えた。
いつ、恋だと自覚したかわからないくらい、自然と彼女をずっと目で追い続けている。
コンテストで二位になるぐらいだから、何かあざとい、人工的な一面もあるのではないかと勘繰った時もある。
普段はあまり目立つことが好きではないらしく、落ち着いた雰囲気の、決まった女友達と行動を共にし、同学年の男子のグループには進んで近づいてこなかった。
天真爛漫な笑顔垣間見るたび、彼女とほんの少しだけでもお近づきになりたいと思ってしまう。
その大きな瞳に、僕が映るのを期待している。
だが、東大クイズ研究会に所属し、朝から夜までクイズ漬けの日々を無我夢中で送っている僕と、彼女の接点は壊滅的だった。
…せめて、伊沢さんみたいなコミュ力と川上さんみたいなルックスがあればなぁ。いきなり声をかけても、怪しまれず、共通の話題を見つけて、スムーズに話ができそうなのに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 74人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
そのうち(プロフ) - 今回も最高でした…！ぐいぐい押せ押せして相手が断れないような「ご飯これからも行こう」という提案するのも溺愛されてるのも大好きです💕今までのお話もこれからのお話ももう大好きです💕これからも応援してます💕 (2022年3月30日 7時) (
レス) @page18 id: 7f613ac8c4 (このIDを非表示/違反報告)
ぼかみ(プロフ) - ありがとうございます！いつまでもおまちしております:) (2022年2月22日 0時) (レス) id: 66b1b1bb81 (このIDを非表示/違反報告)
アテ(プロフ) - ぼかみさん» >>ぼかみ様、温かいコメント頂きありがとうございます！最近また少し時間が取れそうなので、少しずつ執筆しますね:)気が向いたらまた覗きに来てください！ (2022年2月21日 23時) (レス) id: 01a98e675c (このIDを非表示/違反報告)
ぼかみ(プロフ) - 初コメ失礼します。最高でした...！特に窓の外のkoちゃんのお話が大好きで何度も読み返しています！お体に気をつけて、更新をお待ちしております。 (2022年2月8日 23時) (レス) @page4 id: 66b1b1bb81 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みそ | 作成日時：2021年10月24日 0時
