お魚さんの家に落ちてきました。【Fischer's】

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〜マサイside〜


パソコンの前に座り、ため息を漏らす。


…着替え、あれで良かったかな…


「こちらこそ。」なんて言っておいて、なんなんだ。


ハードル高すぎるだろ、これは。


会って間もない女性と2人きりって…


「あー緊張すんな、これ。」


いや、普通にしていればいいんだ。普通に…


…でも、向こうは普通になんてしてられないんだろうな。


急に自分のことを忘れられて、見捨てられたようなものだ。


きっと、俺には到底理解できないくらい、辛いんだろう。


…さっき、Aさんが風呂に入る前に、少し話をした。


Aさんは、俺より2つ下で、実家暮らしをしていたらしい。


仕事もしていたそうだが、その職場の友人達からも「分からない」と言われ、本人は今の職場には戻れないだろうと話していた。


荷物は明日にでも取りに行くのかと思っていたが、実家ということは、それも叶わないだろう。


…じゃあ、色々と買いにいかないとな。


Aさんの力になれると思うと、なぜだかやる気が出てくる。


まだ会ったばかりとはいえ、あの礼儀の良さや話し方からして、良い人だと確信している。


「Aさんか……あっ…」


違った。


「…A…ちゃん。」


…うわぁ……何これ、恥ず…


なんであいつらは簡単にこんな呼び方ができるんだ…


“さん”付けなのにタメ口で話すことに違和感があって、さっき話した時に何と呼べばいいか言葉を詰まらせていたら、“さん”付けしなくていい、と本人から言われてしまい、こうなった。


それなら俺にも敬語じゃなくていい、と言ったのだが「私の方が年下なので。」と、丁重なお断りを食らった。


…あーダメだ。


パソコンを開いたのはいいものの、全然作業に集中できない。


意識していなくても、あの子のことを考えてしまう。


貴「…あの……」


驚いて情けなくも肩をビクッと揺らし、声がした方を見るとその子が立っていた。


貴「…お先に失礼しました。…服、借りちゃってすみません。」


首の下あたりに手を当てながらそう言った。


やっぱり服大きかったか…


「うん。じゃあ、俺も入ってくるから…適当に座ってて。」


貴「はい。」


そう言って、Aさ……Aちゃんの横を行こうとした時、その姿に不覚にも可愛い、と思ってしまったことは、深く考えないようにした。

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