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まわりには光が溢れている。その光の中を漂っているような気がした。静かな水面にボートを浮かべているような感じでもある。カツキさんが私を呼ぶ声がして、初めて自分が寝台に横たわっていると気がついた。
寝たこともないような寝台。彫刻を施した高い脚に支えられ、絹の羽根布団が何枚も重ねてしいてある。漂っているように感じられたのはそのせいだろう。寝台の天井には隙間風を防ぐために深紅の天蓋も下がっていた。カーテンは両側にひかれて、それぞれ紐でとめてある。
体を起こした途端、かけてあったサテンの羽根布団がずれた。見れば、私はいつの間にか王侯貴族の着るような、銀糸織りの絹の長いチュニックを着せられている。私はしばらくそのまま座っていたけれど、やがて寝台から降り立つと、弓を探して視線をさまよわせた。けれど、弓はおろか、ノートやポーチもどこにもなかった。
「ここは……」
窓辺に近寄りレースのカーテンを引くと、街の灯が散らばっていた。近く見える城の尖塔の先端が夜空に浮かぶ満月に重なって輝いている。ここは殿下専用の別宮。結界が閉じる寸前に転移魔法を発動したのだろう。
カツキさん。あの人に何も言えず、こんな形で戻ることになるなんて。
ぼんやりと窓から眺めていると、扉の向こうに人の気配を感じた。ノックの音が響くや否や、返事を待たずに部屋に入ってきたのはショート様だった。私を見る彼の表情はまるで仮面をかぶっているようで読み取れない。ショックからくる不快を礼儀正しくその仮面の下に隠したのだろうか。けれど、その目は相変わらず物憂げだった。
「治癒魔法でお前の首の痕を消そうとしたが、できなかった。竜人につけられたんだな。脅迫されたのか」
「望んで彼に頼みました。彼は信頼できる人だから」
「異種族との婚姻は……禁忌だ。しかも、竜は」
「親愛なる殿下、そのお言葉に当惑をもってしかお答えできないのをお許しください。私の知る竜人は……カツキさんは、ただ静かに森に生きる人です。木々は安らかで、川は澄んでいて、鳥が歌う美しい森です」
掌を握り締める。打ち震え興奮で瞳が潤むのを感じた。
「獣を狩り、薬草を摘み、火を囲んで眠る。強さを持ちながらささやかに暮らすあの人が、魔物を誘い込むわけがありません。殿下は、本当に竜族が人間を誑かし、侵略しようとしていると信じていらっしゃるのですか。お父上ではなく、殿下の、ショート様のお心の声を聞きたいのです」
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えとり(プロフ) - 瑞樹さん» 書き込みからお褒めの言葉までありがとうございます……！ゆったりとした更新ですが、応援していただけてとても嬉しいです^^ (2022年10月26日 20時) (
レス) id: 3ae1089047 (このIDを非表示/違反報告)
瑞樹(プロフ) - 文才があり過ぎて本当に尊敬します……。丁寧な描写がとても素晴らしいです！ 応援しています！ (2022年10月25日 19時) (レス) id: 943a21922c (このIDを非表示/違反報告)
えとり(プロフ) - ぴょんきちまるさん» 素敵な書き込みありがとうございます、その言葉に、私の心も嬉しさで痺れました…！続きもお楽しみください^^ (2022年10月15日 20時) (レス) @page22 id: 3ae1089047 (このIDを非表示/違反報告)
ぴょんきちまる - とても素敵な作品！読んでいて、凄く痺れました！わくわくしました。こんなにも次の話が楽しみで仕方ない作品に出会えて幸せです。 (2022年10月15日 11時) (レス) id: 94182d8a2a (このIDを非表示/違反報告)
えとり(プロフ) - enhy7さん» 書き込みとても嬉しいです…！体が浮いて飛び去ってしまいそうな、幻想的で素敵な曲のご紹介もありがとうございます。物語を引き続きお楽しみいただければと思います。 (2022年10月7日 19時) (レス) id: 3ae1089047 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えとり | 作成日時：2022年9月12日 10時
