#90 静まり返った隠れ家で ページ40
就寝時間。隠れ家にもそれぞれの個室があるから、ここで寝るか寮で寝るかの判断は彼らに委ねている。私としてはここの方が居心地が良いし人目を気にする必要がないと、良い様にここで過ごしていた。
…最近、私はセブルスの部屋を訪ねていない。ある種の駆け引きだと言ってしまうと、それは誰かの反感を買ってしまうだろうか。でも、ここで私があちらに訪ねてしまっていては、セブルスを外に連れ出すことも出来ない。私としても正直心臓が痛い、詩的な意味で。表現が雑だけど。
リビングのロッキングチェアに腰掛け、独特な揺れに身を委ねながら本のページを捲る。眼鏡を掛けてるが決して老眼ではない。私は形から入るタイプなんだ。…誰に言い訳をしてるんだ私は。
不意に、カチャリと玄関の鍵が開かれる。静まり返っていた隠れ家内にその音は響き、私は無意識にその音の出所を目で追った。緩やかにドアは開かれた。
「──おかえり、セブルス。」
「、…いらしたのですか、師匠」
「お前が隠れ家に来るとしたら、誰もいないであろうこの時間に来ることは想像できた。…でも、明かりも付いていない、人の気配もない家に帰ってきたって寂しいだけだろう？」
だから待ってたんだ、と笑えばセブルスは目を細める。本を閉じてロッキングチェアから立ち上がり、私は彼をソファに腰掛けるよう促す。
「怪我の治療をしよう。どうせろくな手当てもしてないんだろ？」
「……いつ、気付かれたので？」
「お前が私を見舞いに来て、二人で泣いたあの日に。本当はもっと早くに手当てしてやりたかったが…すぐにすぐ治っても怪しまれそうだったからな」
おいで、と声を掛けてやれば、彼は静かに歩を進め、一人掛けのソファに腰掛けた。…まだ、足を引きずっている。本当に手当てを疎かにしているらしい。
私は彼の足元に胡座を掻き、ローブをぺらと捲って傷の確認をする。大きな獣の引っ掻き傷。少々膿んでしまっているそれに眉を顰め、ため息をついて彼の踵を自分の膝の上に乗せた。
「もうちょっと治療する素振りくらい見せろよ。痛いのはお前だろうに、どうして放置するんだ？」
お前の魔法薬学の腕なら、傷薬を調合するぐらい容易いだろう。
……簡単ではあるだろうが時間が掛かる。材料も使う。こいつのことだから研究に支障をきたすとして、そうすることを良しとしなかったのかもしれない。
こいつは、おおよそにおいて自分のことは二の次なのだ。
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エトーカ(プロフ) - 白猫さん» コメントありがとうございます！親世代に関しては断片的なネタは一応考えているので、短編のような形で書いてみようと思います。メインがありますのですぐの更新はお約束できかねますが、少々お待ちいただければ幸いです。ありがとうございました！ (2018年4月12日 16時) (
レス) id: 63aaeb6f7a (このIDを非表示/違反報告)
白猫 - 続編おめでとうございます!! できればで、いいのですが夢主の親世代の話も読んでみたいです! (2018年4月12日 15時) (レス) id: bad360ec79 (このIDを非表示/違反報告)
エトーカ(プロフ) - 殺覇さん» お待たせいたしました、ありがとうございます！コメントしていただけるのとても嬉しいです、頑張りますっ！ (2018年4月11日 17時) (レス) id: 63aaeb6f7a (このIDを非表示/違反報告)
殺覇(プロフ) - 待っていました！やっぱりとても面白いです！更新頑張ってください (2018年4月11日 17時) (レス) id: fdc91a3e02 (このIDを非表示/違反報告)
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