#84 罪と罰、架せられた咎 ページ34
──今。私の前では、一人のレイブンクロー生が深く頭を下げていた。レイブンクローの上級生。彼が、魔女狩り擬きを引き起こした首謀者、というやつだった。
私の両隣にフレッドとジョージがいる。彼にとっては所謂、最悪のタイミング。案の定二人は私を守ろうと間に割って入るし、ドラコもハリーも彼から視線を離さずに私の側を離れない。周囲は異様な空気で包まれていた。
「……謝っても許されないことなのは分かってる。それでも、直接謝りたかった。」
ごめん、と、彼は私に謝罪する。
私はふむ、と彼の様子を窺い、数瞬の後、口を開いた。
「私もひとつ、貴方に言いたいことがあったんだ」
「、……何でも、言ってくれ。罵倒も暴力も処罰も、甘んじて受け入れよう」
「ありがとう」
彼は目を見開いて絶句していた。周囲の生徒も同じようなリアクションをしているし、難だったら私の傍の愛弟子達はこいつを許すのかとでも言いたげだ。
各々のそんな反応が可笑しくて、私はつい、場違いにも笑ってしまった。
「…私は神じゃない。貴方を罰するか否かを決めるのは私じゃない。それに、貴方が起こした出来事がきっかけで、私は強くなる決意が出来た。貴方は私に変わるきっかけをくれた」
「………でも、…でも…！僕は君を殺しかけたんだぞ！」
「でも、私は生きている。」
フレッドとジョージの間を割り、私は彼の前に歩を進める。
「許さないことが罰じゃない。許すことが慈愛じゃない。私が判断を下したところで──その判断は貴方に影響を及ぼさない」
私より幾らも背の高い彼の頬に手を伸ばし、ぺちん、と挟むようにして彼の両頬に触れた。
「それを決めるのは、他ならぬ貴方だ」
「………僕、が」
「そうだ。貴方が自分自身を許せるかどうかだ。許すも許さないも、罰するも罰さないも、その罰の内容も貴方が決めろ。それが、貴方に架せられた責務で、貴方だけが持ち合わせた権限だ」
「………」
「他者による許しも罰も、それはただの慰めでしかない。心の安寧には繋がるだろう。でも…それで、貴方は変われるのか？」
「……僕は、」
「貴方が引き起こした罪は、貴方が是非を決めて貴方が罰を遂行しろ。そうでなければ──貴方の罪は、終わらない。」
私が判決を下すことに、意味なんてないんだよ。
ぽろ、と彼の目から涙が零れる。それを皮切りにぼろぼろと涙が溢れ、溢れ、彼は呻き声を上げながら泣いて床に膝をついた。
生きろ、幼子よ。
#85 隠れ家の中では無礼講→←#83 アルバスが守りたいもの
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 239人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
エトーカ(プロフ) - 白猫さん» コメントありがとうございます！親世代に関しては断片的なネタは一応考えているので、短編のような形で書いてみようと思います。メインがありますのですぐの更新はお約束できかねますが、少々お待ちいただければ幸いです。ありがとうございました！ (2018年4月12日 16時) (
レス) id: 63aaeb6f7a (このIDを非表示/違反報告)
白猫 - 続編おめでとうございます!! できればで、いいのですが夢主の親世代の話も読んでみたいです! (2018年4月12日 15時) (レス) id: bad360ec79 (このIDを非表示/違反報告)
エトーカ(プロフ) - 殺覇さん» お待たせいたしました、ありがとうございます！コメントしていただけるのとても嬉しいです、頑張りますっ！ (2018年4月11日 17時) (レス) id: 63aaeb6f7a (このIDを非表示/違反報告)
殺覇(プロフ) - 待っていました！やっぱりとても面白いです！更新頑張ってください (2018年4月11日 17時) (レス) id: fdc91a3e02 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
