#27 為すべきことを為せ ページ27
セブルスの部屋の姿見からドアノブを消して、ぼちぼち本当に急がなければ、と私は懐中時計の時間をチラ見した。
「ん…でも、思っていたよりは時間の余裕が出来たな。助かったよ、セブルス」
「…いえ。」
「今日は確か、午後の授業がお前のだったよな？お手柔らかに頼むぞ」
「師匠ほどの方ともなれば、魔法薬学など造作もないでしょう」
「ハードル上げんなばかたれが。独学しかしたことない未熟者だぞ私は」
「貴方の自己評価はあてになりませんな」
「あんだと？言うじゃねえかくそガキのくせに」
「……昔の話です」
嫌そうにそう返されて、つい笑ってしまう。
昔と“くそガキ”って言ったときのリアクションが一緒で、変わってないところが意外と多いもんで嬉しくなる。
色々あったが、それでもこいつの根本は昔のまま、そうして大人になったらしい。
「まあ、確かにお前は昔よりずっと良い男になったよ。昔から責任感のある男ではあったけどな」
「、………ありがとうございます」
「色々あったが、それを責任転嫁しない点は評価する。…ただ、お前は
「、ですが、」
「事柄の事象は何事も複雑に絡み合っている。他者それぞれの思惑が絡まりそれを為す。お前の周囲に色んな人間がいる以上、お前だけが原因ではないのは確かなことだ」
愚図るセブルスにそうと諭せば、彼は眉根を顰めて悲しみを僅かに表に晒す。彼は感情表現が下手くそで、しかもそれを特定の人間にしか見せないから尚更誤解されやすい。
──その特定の人間、に私が含まれていることに、喜びを感じずにはいられないけれど。
握り締められたその拳に、私は手を重ねる。彼は、俯いた顔を少し上げて私に目を向けた。
「…それでも。それでもリリーは、私が殺した…」
「…セブルス、屈め。私と目線を合わせろ」
弱い部分を見せた彼は、素直に片膝をついて私の前に屈み込む。私は両手を伸ばして彼の頬に触れた。膝をつくまでした彼に、彼の目線は私より下で。
そうくるなら、と私は私の手で彼に私を見上げさせた。じっと彼の目を見つめれば、彼は心許なげに睫毛を震わせて私と視線を交わす。
「いいか、セブルス」
「………、」
「後悔するのは自由だが、それだけでは何も報われん。お前の後悔も、お前の覚悟も、リリーの覚悟も、彼女の、犠牲も。」
後ろを振り返るなとは言わん。
でも、前に進むことをやめるな。
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エトーカ(プロフ) - uetoさん» 自分のことを“私”という男です。年長者の爺なので落ち着いた雰囲気を示してみました。 (2018年6月18日 20時) (
レス) id: 8fe5c80859 (このIDを非表示/違反報告)
ueto - 主人公の性別はどっちですか？男主と書いてあったけど自分のこと私と言ってますがどっちですか？ (2018年6月13日 21時) (レス) id: 20012f22cd (このIDを非表示/違反報告)
エトーカ(プロフ) - 殺覇さん» ありがとうございます！久しぶりに、というお言葉はとても恐れ多いですが、とても嬉しいです！恐縮ですが、もう少々お待ちいただければ幸いです。ありがとうございました！ (2018年4月8日 16時) (レス) id: 845d19f462 (このIDを非表示/違反報告)
殺覇(プロフ) - 一気に読みました。続きを早く読みたいと思わせてくれる作品でした！久しぶりにいい作品に出会えた気分です。続編楽しみにしています！ (2018年4月8日 15時) (レス) id: fdc91a3e02 (このIDを非表示/違反報告)
エトーカ(プロフ) - ヒロさん» ありがとうございます、コメントお待ちしておりました…！私も書いてて夢主のようなお兄ちゃんが欲しいですw公開はもう少々お待ちください、ありがとうございました！ (2018年4月8日 13時) (レス) id: 845d19f462 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エトーカ | 作成日時：2018年3月25日 19時
