彼の証言 ページ35
セ「ではまたな、サリーマ。今度こそ素敵な御人と幸せになれ」
シンドゥラを起つ日、美女二人は別れの挨拶をかわす。
微笑する彼女達の瞳が涙で光る。
サ「そうなれるよう頑張りますわ。ディアル、本当にありがとう。御武運をお祈りしています」
セ「感謝する。…必ずまた会おう!」
サ「はい……!」
…
皆のところへ戻る途中、彼女は建物の影に隠れている人物に微笑みかけた。
セ「納得のいく道は選択できたのか」
?「………はい。アルスラーン王子のおかげで自分が何をしたいのか、よく考える事ができました」
セ「ほう。殿下は何と申されたのだ?」
私の居場所が、おぬしの新しい居場所になればよいと思っている。
彼はどこか嬉しそうな声音で答えた。
セ「あの御方らしいな。貴方がその言葉に応えたと知った時の殿下の喜びようが目に浮かぶよ。
……だが、いきなり皆の前に連れてはいけないな。兵の反感を買う事になりかねん。しばらくの間、他の者に気付かれぬように動いてくれ」
?「分かりました。…あの、ディアル様」
セ「何だ」
?「ラジェンドラ王の事でお話があります」
彼女は少々嫌そうに顔をしかめた。
セ「……聞こうか」
…
セ「兵は火種だったのか。やはりな」
?「やはり?」
ニヤ、と得意気に笑う。
セ「"我等が軍師殿は物の先が見えすぎる御人"だということは知っているだろう?」
?「……ああ」
以前全く同じ事をギーヴに言われた彼は、納得したようにうなずいた。
セ「もとよりおかしいと思っていたのだ。国内を平定しきっておらぬくせに3000騎もの兵を貸したりするか、普通。
………どのみち、奴の策の内容を想定していた我等がうろたえることは決してないがな」
軽く鼻を鳴らすセレンを見て、彼ことジャスワントはパルス軍に敵無し、と本気で思った。
とび色の目がまさに獅子のごとく爛々と光り、美しくも不敵な笑みを浮かべていたからだ。
…
数日後の夜。
パルス本陣には、虫の鳴声と焚き火の音のみ聞こえている。
ひどく静かだ。
その静けさを破ったのは、業火の唸り声だった。
ボオオオオオォォォォォッッ!!
陣地に火の手があがる。
軍旗が燃えていく様を遠目に見ていたラジェンドラは意地の悪い笑みを浮かべた。
ラ「クンタヴァーめ、首尾よく動いてくれたようだな」
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ニーサc(プロフ) - うぅ写真今までのやつもこれも見れない…(´;ω;`) (2018年8月29日 17時) (レス) id: f6874ea2f4 (このIDを非表示/違反報告)
咲き(プロフ) - 咲柄 沖さん» ありがとうございます!続編どんどん書いていきますよ!お楽しみにっ! (2016年5月16日 20時) (レス) id: 11427c146d (このIDを非表示/違反報告)
咲柄 沖(プロフ) - 咲きさん!いつも楽しく読ませてもらっております。この度は7章突入おめでとうございます。ハラハラドキドキ更新がひたすら来るのを待ちわびていました。勿論続編も読ませて頂きます。これからも更新頑張ってください (2016年5月15日 22時) (レス) id: 7ae002d76e (このIDを非表示/違反報告)
咲き(プロフ) - ダ「頼むぞジーニアス……師として顔向けできん」 (2016年5月15日 19時) (レス) id: 11427c146d (このIDを非表示/違反報告)
ワイバーン(プロフ) - ジ「分かりました。言わないでおきましょう。クスクス」 (2016年5月15日 5時) (レス) id: 0ab8e72630 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:咲き | 作成日時:2016年4月10日 19時