父の影 ページ4
王はそれはもう楽しそうに、嬉しそうに話を聞いていた。
相づちをしてくれたり頷いてくれたりしてくださる度、あたしは言葉に例えようのない嬉しさを感じていた。
セ「……つかぬことをお聞き致します。カリカーラ王は…いつもこうして王子達とお話しているのですか?」
カ「……………そうじゃのう……余が病床につく前までは、よく話をしたよ。おぬしが話してくれたようなたわいもない話をの」
セ「…やはり家族とはそのようなものなのですね」
つい、うつむいてしまった。
どうした?と尋ねてくるカリカーラ王の声音の優しさに視界がにじむ。
セ「…………私は…自分の両親が誰なのか、知らないのです……」
カ「!」
セ「私が物心つく前に姉と共に捨てられました………だから父との思い出はありません」
無いからこそ、憧れる。
セ「もし私が捨てられなかったら……貴方様と貴方様の王子達のように、親子で語り合う事ができたかもしれないと………思ってしまいました」
本当に嬉しそうに話を聞いてくれる王に、覚えてもいない父の影が重なったのかもしれない。
セ「申し訳ありません…私『スッ』っ!」
カ「そのような顔をなされるな」
骨ばった大きな手があたしの頭を優しく撫でた。
カ「無いものに憧れるのは人の
セ「………はい」
カ「心のままに泣けばよい……ここには余とおぬしだけ。涙を流す事をとがめる者はおらぬ故…」
…
あたしは泣いた。
手の届かぬ所に行った父母を思って。
静かに泣いた。
手に入らぬ幸せに思いをはせて。
セ「ありがとうございます、カリカーラ王。心の重荷が軽くなった気がします」
カ「そうか、何よりじゃ」
満足そうに微笑む王の顔は親の顔だった。
カ「話相手になってくれた礼じゃ」
セ「礼?……………っこれは」
王が差し出したのは、短剣の中でも小さい小剣。
だがどう見ても普通の剣ではない……宝剣だ。
セ「こ、このような高価な品を受け取る訳には!」
カ「王が取らせる褒美は高価なのが当たり前。受け取りなさい…これは命令……いや、頼みじゃ」
セ「うぐっ」
頼み、と言われたらさすがに断れない。
セ「………………ずるい」
カ「…ほっほっほっ」
面白そうに笑う王の骨ばった手が、あたしの手の中に宝剣を落とした。
剣を光にかざす。
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ニーサc(プロフ) - うぅ写真今までのやつもこれも見れない…(´;ω;`) (2018年8月29日 17時) (レス) id: f6874ea2f4 (このIDを非表示/違反報告)
咲き(プロフ) - 咲柄 沖さん» ありがとうございます!続編どんどん書いていきますよ!お楽しみにっ! (2016年5月16日 20時) (レス) id: 11427c146d (このIDを非表示/違反報告)
咲柄 沖(プロフ) - 咲きさん!いつも楽しく読ませてもらっております。この度は7章突入おめでとうございます。ハラハラドキドキ更新がひたすら来るのを待ちわびていました。勿論続編も読ませて頂きます。これからも更新頑張ってください (2016年5月15日 22時) (レス) id: 7ae002d76e (このIDを非表示/違反報告)
咲き(プロフ) - ダ「頼むぞジーニアス……師として顔向けできん」 (2016年5月15日 19時) (レス) id: 11427c146d (このIDを非表示/違反報告)
ワイバーン(プロフ) - ジ「分かりました。言わないでおきましょう。クスクス」 (2016年5月15日 5時) (レス) id: 0ab8e72630 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:咲き | 作成日時:2016年4月10日 19時