俺らに任せとけ ページ38
.
生憎、スピーカーフォンにしていたために、司と嵐の口論はカフェに居たアイドル全員に聞こえてしまった。
『あ、あの…お姉ちゃんに司くん?どうしたの…?』
いつもよりも声が大きく迫力がある二人に、Aは目をぐるぐる回して慌ててしまう。
「だから、Aちゃん!」
「待ちたまえ!!」
唐突に宗が会話に入ってくる。威厳のあるその言葉と声に嵐、司、Aは固まる。
「この小娘に着せる衣装かね?」
「ええ、そうよ」
宗は腕を組んで、Aをじっと見つめる。
「その君たちが作ったという製作図を見せたまえ」
カメラをオンにして、嵐も司も製作図を順番に見せる。
「これは……」
宗は考え込んだまま、椅子に座ってしまった。
その様子を見て、奥の方から少しいかつく見える男性と2人の男性が近付いてくる。
「おい、斎宮。どうしたんだ」
「何かあったのであろうか」
「ああ、ちっと様子がおかしいな」
上から順に、蓮巳敬人、神崎颯馬、鬼龍紅郎だ。
『紅月の皆さん、こんにちは』
Aが素早く、3人の存在に気づき、挨拶をする。
すると、紅郎は宗と同じように司と嵐が映し出している製作図を見つめる。
「なあ、逆先。これ、印刷できるか?」
「うン、できるけド?してこようカ?」
「頼んだ」
夏目はAからデータを受け取ると、薄暗い部屋に入り、製作図を印刷してきた。印刷した紙を紅郎に渡すと、夏目は再びカップを磨く。
「こう見ると……斎宮、これでどうだ?」
「…ああ、完璧だ鬼龍」
宗と紅郎は二人で製作図を見ながら何やら鉛筆で書き足していく。
「出来たぞ嬢ちゃん。これ、どうだ?」
『か、可愛いっ…!!』
渡された製作図をきゅっと持つと、笑顔を浮かべる。
「これ【GIC】で着るヤツなんだろ?それなら俺らに任せとけ。この衣装作っといてやる。もちろん、決勝戦とかで着れるように何着か別パターンも用意してやるぜ?」
「俺らということは僕もかね……まあ、良い。任せろ小娘」
二人はお互いを信頼しあっているようだ。
『ありがとうございます!…ところで、お二人の関係は?違うユニットですよね…?』
「ああ………幼馴染………じゃないぞ」
宗の曇った顔に気付いたのか、紅郎は言葉を濁した。
.
12人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:梓詩織 | 作成日時:2022年10月12日 21時