バスと謎の男 ページ17
.
道をよく見渡してみると、徐々にバスが近づいて来ている。
「あ、A。バス来たみたいやな。乗ろか?」
それを見ていたサクラは、自分が座っていたベンチの下に置いていた荷物を持って立つ。
『うん!よし、行こう!』
サクラの様子を見計らって、スマホをカバンにしまい、Aもその場に立つ。
バスの到着音が鳴り、ドアが開く。LIVEを見に来たファンたちが、さまざまな格好をして、痛バを持って降りてくる。
ドームで降りる客が全員降りた。
そのことを確認して、Aとサクラがバスに乗ろうとしていたその時、後ろから誰かが叫ぶ声が聞こえた。
「待ってくれーーーーーーーー!!!!」
その言葉を聞いて、Aはバスに乗ろうとしていたサクラの腕を掴む。
「何やの?A」
『誰かが「待って」って、こっちに来て…』
Aが不安そうにサクラの顔を覗き込むが、サクラは「どうせ別の人声かけてんのやろ」などと言って、バスに再び乗ろうとする。
それを見て、Aも疑問を抱えながら、バスに乗ろうとする。
すると、今度はAの手が何者かに掴まれる。
「待ってくれって……はぁ……言ってるのに……はぁはぁ……何で待ってくれないんりゃ…?」
Aの手を掴んだのは、サングラスにマスクをした背丈の低い男だった。
『っな、なんなんですか?誰なんですか?!』
Aの大きい声を聞いて、先にバスに乗っていたサクラもドアに駆けつける。
「あんた、誰なん!」
サクラがその男を指差す。
彼がサングラスとマスクを外そうとしたとき。
「ちょっと、お姉さんがた。乗るんです?乗らんのです?ええ加減、もう出えへんとあかんから早よしてもらえます?」
車掌が運転席から、歪んだ顔をこちらに向ける。
「ああ、すんません!一回出ますから、荷物取りに行く時間だけください」
サクラは急いでバスの中に置いた荷物を取りに行く。
「まあ、ええですわ。でも、なるべく早よお願いします」
車掌はコーヒーを飲みながら、退屈な時間をつぶす。
「ありがとうございました。全部荷物取れました。長い時間失礼しました」
サクラとAとその男は、車掌に礼をして、バスから少し歩く。
「それじゃ、出発します。次は____」
車掌の言葉と共に、バスのドアが閉まった。
.
12人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:梓詩織 | 作成日時:2022年10月12日 21時