Escape from Fate (ページ49)

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「じゃあさ、友達になろうよ」

『…は？』

思わず間抜けな声が出る
友達…？

『何言ってるんですか』

「今の俺らの関係性だとダメなんでしょ？なら友達なら良いってことじゃん」

『なんで私たちが友達になるんですか』

「え、だめ？」

可愛い口調で言っていても
相変わらず瞳は私を強く捕らえていて
離すつもりなど毛頭ないと語りかけてくる

「正直なこと言うとさ、俺も無理してここ来てんの。でもこれからその時間すら確保出来なさそうでさ。俺がさくらと友達になりたいの」

「友達なら連絡先交換してて当たり前でしょ？」

そうだよね、来月から舞台本番だもんね

いつも彼は10分15分私と話した後
足早にここを後にする
そもそも、舞台があることは私も重々承知しているし
稽古で疲れている中来てくれてることはわかって居た

だからといって…

「無理…かな？」

しばらくの無言
何も言えない私に痺れを切らして
彼が小さく呟く

『無理です』

「だよね」

『勤務中は私用スマホを持って居ないので』

「え？」

『とはいえ、連絡先をメモして渡されても落としたら困りますから受け取れません』

彼はうーんと考えた後
また何か言おうとしたけれど
マネージャーさんから電話が来てそのまま仕事に戻った

彼と連絡先が交換できない理由(正当な建前)も伝えたし
もう大丈夫かな

その後の勤務はいつも通り
いつも通り笑顔で接客して、いつも通り同僚と喋る

遅番の勤務は23時までだけど
今日みたいな週末は混雑して終わりが遅くなる日もある

「終わった…やっと終わった」

『なんで最後の最後に激混みするかな』

「A明日いる？」

『2連休』

「裏切られたわ」

ロッカールームで疲れ果ててさっさと帰り支度をする広瀬にピースを向ける
2連休は嬉しいけれどなんの予定も無いし
彼に会えないことも確定してる
溜まったドラマでも見ようかな