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再度皆さんにお礼を言い控え室を出る
『それでは失礼致します』
ドアの音がならないようにそっと閉め
終わってしまった夢のような時間と
行かなくてはならない勤務にそっと溜息を着く
「でけぇ溜息」
『!?』
「おせぇ」
声がしたそこには控え室前の廊下の壁に寄りかかって
鋭い瞳でこちらを見る我が自担
その瞳を見つめられなくて思わず下を向く
なんでここに居るの…?
そう思ったのが伝わったのか彼は続ける
「待ってた」
待ってた…!?
何故!?
「ここで働いてるんだね」
「髪の毛シニヨンにしてるの雰囲気変わっていいね」
「似合ってる」
「制服も可愛い」
「この後まだ仕事?」
「って言っても俺もまだ仕事残ってるからアレなんだけど…」
「って聞いてる?」
「無視すんなよ」
無視をしている訳ではなく
自担が私を待っていたと言うことに衝撃を受け
私に話しかけて来ているということにも衝撃を受け
何も話せなくなっているだけなのです
「おい、さくら」
『!!!!』
急に名字を呼ばれて思わず顔を上げると
さっきよりも近い彼に
『あひえぇ!』
小さく悲鳴を上げて退くと
クックッと喉仏を揺らして笑う
「なんちゅー声出してんだよ」
『オタクは自担を目の前にしたらこうなります、う!』
「さっきまで普通だったじゃん」
『仕事なのでぇ!!ち、近いです!』
喋りながら1歩、また一歩と近付いてくる彼に
もうどうしていいのか分からない
「運命♡とか言ってた子と同一人物?」
『あの時はもう頭おかしかったんです』
「あのキメ顔可愛かった」
『ああああ!もうそうやってオタクをからかわないでください』
彼の顔がぐんと近付く
これ以上近付かれたら私の心臓が止まってしまうのでは無いかと思った時
彼を探すスタッフさんの声が聞こえる
『よ、呼ばれてますけど』
そう声をかけると彼は小さく舌打ちをして顔を離す
そして私を再度見つめて
「また来るから」
そう言って彼は廊下の奥へと進んで行った
また来るって何!?
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作者名:ゆき | 作成日時:2023年2月4日 21時