Escape from Fate

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客席に手を振りながら外周を歩いてくる彼
玉森くんのパート中で私たちの目の前に来ると

昨日と同じ表情でこちらを指さす

わーっと手を振り彼を見送ろうとすると


「ねえ！一昨日居た？」


立ち止まった彼に何故か話しかけられる
流れるアップテンポな曲、響く歌

それに負けないよう少し張って届けられる彼の声


『い、居ました！』

「どこ？」

『天井席でした』

「あー、そう」


慌てて答えると
少し不機嫌そうにそう言い残して立ち去る彼


「え、たいぴどしたの？」

『わかんない、けど舌打ちしなかった？』

「そう？聞こえなかったよ」

『ならいい』


''あー''と''そう''の間に小さく舌打ちが聞こえたような気がして
友達でもなんでもない人に向かって舌打ちをするとは何事だ
と少しムッとした

その後の彼のソロパートもいつもより荒々しく感じて
今日はご機嫌ななめな日なのかななんて思った

彼は昔から、機嫌が態度に現れやすく
さっきまでご機嫌だったのにアンコールで出てきたらご機嫌ななめなんて事もあった

とはいえ離れていた期間のことは知らないから
変わっていないのか
相当虫の居所が悪いのか
どちらかと思った

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