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コンサートは滞りなく進んだ
メインステージが近すぎて
何度か魂抜けそうになったけれど
彼らの本気のパフォーマンスをこんなに近くで浴びれることそうそう無いから
遠慮なく、心置きなく楽しんでいた
MCは本当に彼が近かった
彼が目の前にいる
高い鼻とぽってりとした唇が美しすぎて
彼の横顔に思わず見とれる
「(人1)、たいぴ目の前だけどうちわ出さないの?」
『いいよ、恥ずかしい』
「気付いて貰えるかもよ」
『見てるだけでいいよ』
コソコソと小声で話しながら
ぴぃ子は私の手元のうちわを掴んでくる
そんな彼女の手を軽くあしらいながら
彼から目を離さない
ふと彼の視線が私達の方に向けられる
それと同時にみんなが小さくうちわや手を振り
彼にアピールをする
「負けてらんないよ!」
あっと思うが早いか
私の手からうちわが抜かれ
今持っているうちわに重ねて握らされる
彼は視線をゆっくり動かすとみんなのうちわを眺めているようだった
あ、もう少しで私達の方見るかも
「ね!ガヤさん」
と思ったが宮田くんに話を振られ視線をステージに戻す彼
残念に思いながらも、彼にこのうちわを再度見られずに済んだ安堵もある
それからしばらく彼の視線がこちらに来ることは無く
亜美お手製のうちわもそっと役割を終えたように思えた
うちわを順番を入れ替え
彼の顔が正面に来るように持ち変える
でも何かあった時に見せれるように
うちわをくるっと返せば文字が見えるように
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作者名:ゆき | 作成日時:2023年2月4日 21時