Tear3 ページ5
彼女は突然、立ち上がった。
膝下に溜まっていた花びらが宙に舞う。
そして、僕に杖を向けた。
「…気持ち悪いでしょ、こんなの。
誰かに知られたらきっとみんな拒絶する。
だから、ごめんなさい。記憶を消させてほしいだけなの。」
杖を人に向けることや、記憶を消すことに抵抗感があるのだろう。
しかし、知られたくない秘密ならば、とっとと消すべきだ。他人は信用ならない。僕だって、憎きポッターの話ならすぐ人に話してしまうはずだ。
しかし、彼女の秘密は到底、人に話す気にはなれなかった。これは簡単に話していいことではない気がした。話すことで、その美しさの価値を卑下してしまうと思った。
「気持ち悪くなんてない。
それに、僕は誰にも話す気はない。」
僕の発言に、彼女は目を見開いた。
「…そ、そんなわけ……」
「破れぬ誓いを結べる位には僕は口が堅い」
そういうと、彼女は杖を下ろした。
「…そこまで言われたら、信用しなくっちゃね
杖なんて向けてごめんなさい」
スリザリンなんて、狡猾な奴らが多くて信用してはいけないと思うが、彼女は僕を信用しているようだった。
とんだお人好しだ。こういう人間はお生憎様、僕の周りにはいない。
「…私、A・フォーリーというの
貴方のお名前は？」
「ドラコ・マルフォイだ」
「ドラコ…いい名前ね
ねぇ、良かったらまたお話しましょう？
あなたみたいなスリザリン生となら仲良くしたいの」
しかも、彼女は僕と友達とやらになりたいと言ったのだ。僕にはありえない行動だった。得体の知れない奴など、何を言いふらすか溜まったものじゃないからだ。
「…気が向いたら」
僕が素っ気なくそういうと、彼女は「嬉しい」と言った。
素直で、笑顔で、人懐っこい。
それでいて、美しい秘密を抱えている。
思えば、そんな二面性を持つ彼女にこの時から惹かれていたのだと思う。
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作者名：ソイみるく。 | 作成日時：2023年8月23日 22時
