最期に君の声が聴けたなら。

【残り44週間】another story2 ページ17

-莉犬 side-



『私ね、好きな人ができたの』


入学してから3か月、7月に君はそう言った。


莉犬「ええ、なんでよ...」


信じられなかった。あんなにも男が嫌いだった君に。俺としか話さなかった君に。

好きな人ができるなんて。


A「なんでって言われても...気づけば好きになってた。」

莉犬「応援するよ。」



俺もAと一緒なんだ。

自分の気持ちを押し殺して、嘘を言って。

きっと振られることから逃げたんだ。俺は。
　
『応援』なんていう綺麗事で取り繕って。




それから毎日のように君は青野先輩の話をした。

正直聞くのは辛かったけど君が笑顔ならいいやって思えた。

好きな人は高2の先輩の青野ころんだって。

サッカー部の人。サッカー上手いしかっこいいし。

俺がかなうわけないじゃん。



それから時は過ぎて高2の秋

君は青野先輩の話をいきなりしなくなった。


莉犬「青野先輩と何かあったの？」

A「何もない」

莉犬「青野先輩の事好きじゃなくなったの？」

A「.........わかんない」


君はそう答えるだけ。もしかしたら本当に好きじゃなくなったのかな。

嬉しいような複雑な感情だった。

これで俺のほうに向いてくれたら嬉しいけど、Aの笑顔は確実に減った。



だけど君は高3になったら青野先輩の言ってる大学に行きたいんだってすごく勉強を頑張りだした。

俺はAと青野先輩の事情なんて知らないけど、分かったことは



俺の方には全く振り向いてくれないんだなって事。



そして俺たちはそれぞれの道に進み、会う機会もぱったりなくなった。

唯一聞いた話は無事青野先輩と付き合えたって話だけ。

嬉しくなんてない。それが本音。

本音なんて言わなければ誰も分からない。

だから俺は本音を隠して嘘をつくんだ。


「おめでとう」って。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ころん「よっA！」


Aと話していると青野先輩がやってきた。

俺のライバル。でもAを幸せにしてくれてるから妬んではいない。


俺たちは別れ、二人が帰っていく。


後ろからみた二人は俺なんかが入れないくらい輝いてて、幸せそうだった。


莉犬「俺の入る隙間はないか。」



それより今日は少しAの様子が変だった。

誰にも話せない悩みでもかかえてそうな。


ドラマでよくある病気とか？


いやまさかね。あるわけない。



そんな変なことを考えながら雨上がりの街を歩いた。

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