310) 逃避（You side) ページ10
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A「あの、ちょっとお手洗いに…」
皆の視線に耐えられなくて、席を立った。
ちいさな店のお手洗いで時間を潰せるのなんてせいぜい5分。
でも今は戻りたくなくて困っていたら、奥に非常階段があるのを見つけた。
外の風が気持ちいい。
外に出て少しだけ階段を降りたところで頭を冷やすことにした。
ユノが理由もなく人にあたるなんてあり得ないから、きっと何か耐え難い事があったんだと思う。
それも私がらみの事で。
普通に接していられるように、バクバクする心臓を静めてから戻ろうと思った。
冷えた鉄の階段に座って膝をかかえて座っていると、
ギィ…
後ろから扉が開く音。
「A…」
大好きな人の声。
振り向くと、ユノが泣きそうな顔をして立っていた。
A「ごめん…直ぐに戻るね。」
まだ心の準備が出来てない。
まともに顔が合わせられなくて、ユノのすぐ隣を通りすぎようとした。
その時
グッと引き寄せられて、大きな腕に包まれた。
ユノ「…ごめん、A。俺が悪いんだ。」
※
※
二人とも無言のまま時間は過ぎる。
ユノの腕は小刻みに震えていた。
こんなことは初めてで。
A「ユノ…何かあったの？」
ユノ「ん…全て話すよ。Aに当たったりしてごめんな。」
A「…」
ユノ「とりあえず…席に戻ろう。みんな心配してる。」
ユノに手を引かれて皆の待つ席に戻った。
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作者名：mari
| 作成日時：2019年5月16日 0時
