215)許せない<YN side> ページ15
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しばらく暗い廊下を歩いて、刑事さんが開けた部屋は取調室だった。
「ここで待っててください。」
通された部屋はまるっきり刑事ドラマで見る部屋そのもので、安っぽい金属音のするパイプ椅子に腰かける。
すると扉が開き、刑事さんとうつむいたあの男が入ってくる。
「5分だけです。私も同席させて貰いますよ。」
ユノ「構いません。ありがとうございます。」
刑事は足元も覚束ない緊張状態の男を椅子に座らせた。
俺の真っ正面に座った若い男は肩を震わせたまま顔を上げない。
ユノ「何故、俺を襲った？」
男「すいません…」
ユノ「理由を聞いてる。時間が無いんだ。答えてくれ。ユン家とはどういう関係なんだ？」
男「あの…怪我した人は…？」
ユノ「心配ない。傷も浅いし数日で退院出来るそうだ。」
男「そうですか…良かった…」
心底安堵したように見えるその姿は、演技には見えなかった。
男「…あなたを脅せと…言われました。」
ユノ「ユンに？」
男「…はい。」
ユノ「あなたとユンの関係は？」
男「僕の母は…ユン家の家政婦なんです。」
ユノ「…」
男「母が仕事中に… 客間にかかっていた絵画を傷つけてしまって…弁償額が300万も…そんな大金…僕たちには…」
ユノ「それで…俺を脅せばチャラにしてやるとでも言われたのか？」
男「…はい。ただ少し…切りつけるだけのつもりでした…なのに…あの人があなたを庇って…」
ユノ「…」
「もういいでしょう？」
刑事に退室を促され、黙って部屋を出た。
男は立ち上がって深々と頭を下げる。
大切な親友を傷つけた男を2〜3発殴ってやるつもりでいたのに、どうしてもそんな気になれなかった。
事情聴取も終わり、警察署を出ようと出口に行くと、小柄で年配の女性が立ちすくんでいた。
あの男の母親だろうか？
あの男は早くに父親を亡くして、親ひとり子ひとりだと言っていた。
どんな理由があっても人を傷つけていい筈がないけれど
立場が弱い者を私欲に利用するなんてユンは許せる訳がない。
完全に頭に血がのぼっていた俺は、警察署を出て大通りでタクシーを捕まえると再びドンヘがいる病院に向かった。
カバンの中で鳴り続けている着信音には気づかずに。
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作者名：mari
| 作成日時：2018年7月7日 0時
