愛しのキキーモラ 7 【ヴィクトル・ニキフォロフ】 (ページ13)

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皇帝とキング　⑨ ページ13

「ヴィー、勇利くん、ユーリ・・・・騒ぎを起こしてごめんなさい」

震えながらも言い返した海咲に、騒ぎを聞きつけたヤコフとリリアがどうしたのかと駆け寄ってくれるが、それよりも早くヴィクトルが腕の中に囲ってしまう。

「何故海咲が謝るんだ、今のはどう考えてもアイツが悪いじゃないか」

俺が警告したのに無視して海咲を怖がらせ、批判したのはアイツだろ？と言うが、騒ぎを起こしたのは自分だからと首を振る。

「ヴィクトルの言う通りだぞ、お前こんなに怯えといて、寧ろ良く言い返せたな」

「うん・・・・・」

頷きながら、ヴィクトルの胸に顔を埋めた海咲を泣きそうな顔で抱き締める彼に、ヤコフとリリアは何となくの話の流れで察したらしい。

「海咲、大丈夫ですか」

こんなに震えて、と髪を撫ぜたリリアに顔を上げた海咲は大丈夫です、と答えるが誰が見ても怯えきっていて痛々しい。

「無理なら、観客席に早めに行ってなさい」

「はい」

そうします、という前にヴィクトルからStopと言われる。

「え？」

「このままの海咲を一人に何て出来ない」

もう少し俺の腕の中に居てよ、と言われ海咲は考えを巡らせるが、ヤコフからそれも一つの手だな、という言葉に背を押され、もう少し居ても良い？と尋ねる。

「っ勿論だよ」

「ありがと～」

怖かったぁ～と泣きながらも笑おうとする海咲に、素直に泣いとけよ、とユーリに言われ苦笑すると、勇利があれは怖いよねぇ、と同情してくれた。

「一体、何があったのです？」

む～としているヴィクトルの代わりに、ユーリがざっくりと説明すればリリアが何故海咲が謝らなくてはならないのかわからないと首を横に振る。

「話を聞く限り、海咲が謝る必要性を感じません」

そういう時は謝らなくて宜しい、と言われるが、海咲はだって彼選手だったもの、と反論する。

「はい？」

「選手のモチベーション下げちゃ駄目だもの」

私は応援しに来たのであって、他の選手のモチベーションを下げに来たのではないと強い目で見上げる海咲に、リリアの表情が僅かに緩む。

「なんていい子・・・・此処は戦いの場です。
そんな気遣いは不要なのですよ」

貴方のその心根の優しさは身内にだけ向けなさいと諭されるが不思議そうに首を傾げる様子にヤコフが通じとらんな、と苦笑した。