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「佐光!無事やったんか!?」

「おはよう沖久。呼び出されたくらいで大袈裟すぎない?」

「あったり前やろ!?」


朝練で毎朝遅刻ギリギリな沖久が私の元にやってきたのは家庭科の実習時間だった。壊滅的に裁縫ができない私が評定をもらった時点で可燃ごみになりそうなエプロンもどきをミシンで縫っていると、沖久がぬるりと私の班にミシンを持ち込んできた。

コンセントに限りあるけどいいのかこいつ。


「原田が呼び出したって聞いた時には佐光死んだかと思ってん⋯⋯!」

「いや、バッチリ生きてるよ。ちゃんと弁解しといたし」

「それやそれ!佐光が角名と話す隙を与えるなんて天変地異や思うたわ!」

「本人目の前にいるんですけど」


席が隣のため当然同じ班の角名君は私の前で別の男子と話しながらエプロン製作を進めている。確実に沖久の言葉は聞こえてるだろうに徹底して知らん振りしてくれる優しさよ。


「原田性格悪いかんな、気ぃつけな」

「そんなにヤバい子じゃなかったよ。話せば分かってくれたし」


まあ絶対私の事は見下してそうだけど。

沖久はまあるい二重の目をグッと縮めた。


「そもそも何で進路指導室の前で角名と話す事になったん?なあ角名?」


責めるような口振りで矛先を向けたのはまさかの角名君だった。

沖久は私が角名君と話さないよう極力注意を払っていたのをよく知っている。知っているからこそ、話しかけたのが角名君の方だった事も分かるのだ。

でも待って、角名君私と口裏合わせしてないんだって。こんな場所で本当の事話してみろ?私は間違いなく原田さんに殺される。

そんな私の焦りをよそに、角名君は淡々と返した。


「進路の話。進路指導室から佐光さん出てきたからちょっと気になって」

「は?原田が騒いでた内容とまんまやん。これ、本当なん?佐光」

「うん。マジで進路の話。私進路特殊じゃん?」

「まあそうやけど⋯⋯」


怪しい、と思い切り顔に出てる沖久から顔を逸らす。どうして角名君が私が原田さんについた嘘を知っていたのかは不明だけどおかげで命拾いした。

ありがとうの意味を込めて角名君を見上げると、角名君はじっと私を見てから、目ェ離して大丈夫?と聞いてきた。

慌ててミシンをみれば、大幅に縫い目の進行方向からはぐれて迷走していた。

台風かお前は。

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エリンギ(仮) - コメントありがとうございます!!!個人的に恋愛に持っていくのが苦手なので、悶えて頂けて嬉しいです!!! (10月6日 13時) (レス) id: 813d891d73 (このIDを非表示/違反報告)
00137R(プロフ) - 初コメ失礼します。いつも悶えながら読んでます。ワートリとハイキューのクロスオーバーは滅多に見ないので見つけられて嬉しいです。更新ありがとうございます。 (10月5日 20時) (レス) id: c326ad8a0b (このIDを非表示/違反報告)
エリンギ(仮) - コメントありがとうございます!!!ワートリ好きさんに見ていただけて嬉しいです!!!ワートリネタもちょいちょい散りばめているので、楽しんで頂けたら嬉しいです!! (10月5日 20時) (レス) @page32 id: 813d891d73 (このIDを非表示/違反報告)
ペネロッペ(プロフ) - か、神作品ですか!?私ハイキューもワートリも好きで見始めたのですが最高すぎます!!更新応援してます!! (10月5日 10時) (レス) id: 2422f6c645 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:エリンギ | 作成日時:2023年10月1日 16時

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