アイドルなんてキラキラ (ページ8)

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あの後はまあ、普通に家族が起きる前にAさんを昨夜停めた駐車場に送って、
「後でまた迎えに行きますね」と彼女は笑顔で車を走らせたのだった。

俺は俺で家の中にAさんがいると思うとソワソワして何回も寝返りしてしまって、案の定寝不足。

彼女を見送った駐車場から戻ると
「健永、誰か泊まったの？」なんて、母親が綺麗に畳まれた布団と、少し片付いた客間を見て言う。

「いや、なんか、Jr.の子が終電逃しちゃってて」

「へえ、最近はこんなかわいいピアス付けてるJr.の子がいるの～へえ～」

ニヤニヤと笑う手元にはAさんが付けていた華奢なデザインのピアス。

「あ、いや、あのー」

「客間なんかに通すなら自分の部屋に通しなさいよ」

そんな母親の高揚したテンションの言葉になにも言えず、俯きながらピアスを受け取るのだった。

現場入りしたタイミングで、
Aさんが忘れていったピアスを渡すと

「ああ、やっぱり、千賀さんのお家にあったんだ」

そう言ってその場で彼女は身につけた。

そのピアスは俺のマネージャーになる時には既に付けていて、何年も付けている。
彼氏の高嗣さんがくれたものだろう。

…そのまま、捨てちゃえばよかった。

なんて。

「大事な物なんだから、忘れちゃダメですよ」

何気なく、そう言うと

「…はい、そうですよね、ふふ」

Aさんは少し考えるような素振りをしてから、元気なく返した。

ん？
彼女の表情をよくみると曇っていて。

「なんかありました？」

「いえ何にも」

「嘘、ずっと一緒にいるから分かりますよ」

Aさんは少し頼りなく笑うと、ぽつりと

「昨日帰らなかったの怒られちゃって。喧嘩中です。」

ピアスを指でつついて「コレも忘れたの気付かれちゃって」と言った。

そうなると、俺もバツが悪い。
なにも言えず、チラリと彼女を伺うと。

「あ、千賀さんが悪いわけじゃないですよ？
タイミングです、タイミング。」

「いやいや、元はと言えば俺が飲んじゃったせいですし」

その言葉を聞くとこっちを見てAさんは笑った。

「あれは、千賀さんなりに頑張ったんですから」

そんな事を笑顔で言うものだから、俺は心臓をきゅうと掴まれたように苦しくなった。

申し訳なさと、それから、Aさんが彼氏と喧嘩になってしまったのにも関わらず
やっぱり彼女が好きだという感情。

「Aさん、あの」

「すみません、変な話して、着替えましょうか」

俺の言葉を遮るようにAさんはまた笑って
席を立つのだった。

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