４ side s ページ5
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「千賀くん飲んで飲んで」
「いや、マジで僕飲めないんですよ！」
人がひしめき合う座敷。
目の前には誰がこんなに頼んだんだ、絶対飲まないでしょとツッコまざるを得ない手付かずのジョッキと日本酒の徳利。
なんでこんなことになっているかと言うと。
冠番組が5周年で節目という事で飲み会が行われた。
毎回こういう飲み会で飲めない俺は
「私が代わりに飲むので」と言う男前なAさんを盾に参加してた訳だけど。
今日は気付いたらAさんが隣に居ず、何故かプロデューサーの前に座らされていて。
俺の横に座ってる横尾さんなんて日本酒をもう何本も空けさせられていた。
「千賀、いっとこ、もーしょうがない」
呂律は元から怪しいけど、さらに何言ってるかわからない横尾さん。
横尾さんも横尾さんで、
飲めない俺を守る為にぐいぐい飲んでたという事は痛いほど分かっているのだけど
もう俺に勧め始めはじめるあたり、結構限界のようだ。
「じゃあ少しだけですよ？もうどうなっても知らないですよ？」
そう言って、手付かずだった目の前のお猪口をぐいっと口に含むのだった。
「千賀が飲んだぞー！」
なんて横尾さんは変なテンションになっていて、周りもそれを聞いて盛り上がる。
「はい、まだあるよ」
もうこうなったらどうにでもなれ、酔いが回る前に俺はまたそれを口にするのだった。
「えっちょっと千賀さん？！」
そんな中、Aさんが俺の事に気がついたようで走り寄る。
あ〜頭がふわふわしてきた。
「あー、Aさん〜」
「えー、ちょっと誰ですか千賀さんに飲ませたの」
体に力が入らなくて、Aさんに覆い被さる。
いい匂いする。落ち着く。
「いいなー千賀。」
「いいでしょー」
羨ましがる横尾さんに見せつけるように
Aさんの肩に頭をぐいぐい擦りつける。
「もう、千賀さんっ、水飲んで」
「はい、はい、」
Aさんは俺を引き剥がすといつの間に頼んだのか、大ジョッキに並々注がれた水を俺に持たせる。
うーん、焦点が合わない。
横には大好きなAさん。
「Aさあん」
水を飲む前にAさんにもう一回抱きつくと、Aさんは諦めたようにため息を吐いたのだった。
そこから俺の意識はなくて、目を覚ますとみんなが飲んでいる横で結構雑に寝かされていた。
まだまだ人数は減っていても飲み会は続いているようだった。
「起きました？」
体を起こすとAさんが呆れたように俺の顔を覗き込む。
さっきまでの失態が鮮明に蘇って
「すんません…」と呟く俺であった。
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作者名：soda | 作成日時：2020年6月12日 0時
