11 side s ページ20
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「千賀さん、おはようございます!」
「泣いてめっちゃ浮腫んでると思って楽しみにしてたのに〜」
「ちゃんと目、冷やしたり温めたりしました」
車に乗って現場を目指す。
彼女は次の日、冗談を返すくらいには
たくさん泣いて、元気になったようだった。
今日は雑誌の撮影。宮田と確か一緒だ。
なんかいろいろ聞かれそうだなあ、なんて漠然と考えながら窓の外を眺める。
「千賀さん、本当ありがとうございました」
「えっ、」
「誰かに聞いてもらえないと、多分あんなにスッキリ泣けなかったので」
少し恥ずかしそうにいう彼女。
感謝されるような事してないんだけど、
Aさんがそう言うならよかったのかな。
「はーい、つきましたよ。」
「あ、ありがとうございます」
スタジオに着くとすでに宮田は到着しており
スマホゲームをしている手を止めて
「千ちゃんっ」
と俺に駆け寄る。
「どうだった?」
「あー、うん、美味しかったよ」
「そっちじゃないでしょ!」
キョロキョロと他に誰もいない事を確認して、声のボリュームは抑えめで昨日の経緯を説明する。
宮田は頷きながら真剣に聞くから、本当に気になってたんだなと思った。なんかドラマの結末を聞いてるように反応する。
「え?じゃあ千ちゃん、なんも伝えてないって事?」
「うん、いや昨日じゃなかったの俺の中で」
「ええーっ、ドラマだったら絶対言ってるヤツじゃん」
いやいや、ドラマじゃないんだってと苦笑いする。
「そんなんじゃ誰かに取られちゃうよ?」
「いや、そんなドラマみたいなことある?」
「千ちゃんがちゃんと好きって言わなきゃ!マネージャーさん気づかないじゃんっ
あーなんか今観てるアニメの続きより気にな…」
宮田の言葉がいきなり止まる。
スタジオの入り口をじっと凝視して、めちゃくちゃ気まずい顔をし始めた。
「何?」
振り返えると、
「あ、す、すみません、」
そこにはAさんが顔を真っ赤にして立っていた。
「メイクさん、準備できたみたいで、あっ」
手元にあった今日の資料なんかをバサバサと落として、いつもこんな抜けてる所を見せないAさんがわかりやすく動揺してる。
…今の、宮田の言葉、聞いてた??
「Aさん、あの」
「あ、あの私ちょっと」
言い訳のひとつでもしようとAさんに近づこうとすると、彼女は「ちょっと呼ばれてたので!」と、その場から足早に逃げていった。
えっ
ウソでしょ?
何年も育ててきたこの気持ち、
こんな呆気なく終わってしまうの?
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作者名:soda | 作成日時:2020年6月12日 0時