・ side s ページ16
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「ねえ、宮っち。」
「何、神妙な面持ちしちゃって。」
ラジオ終わり
宮田を引き止めてスタジオ横のベンチでコーヒーを飲みながら、衝撃的すぎた先程までの経緯を説明する。
1人では考え込んでしまって、誰かに聞いてもらいたくてしょうがなかったのだった。
宮田は、他の興味津々でいじってくるノリとは違くて真っ先に頭に浮かんだメンバーだった。
「俺だったら茶弾華かなあ、広尾の、あっ違う?
高級店の話じゃない?」
「あのさあ…そーゆうボケいらないから!」
「ああゴメンゴメン!」
いつものようにヘラヘラする宮田。
「こういう相談普段俺されないからさー」と頭をかいて何故か嬉しそうにした。
「いやでも、別れたいって検索してるなら別れたいんじゃないの?」
「まあ、そうなるよね」
「なんでそんな考えることがあるのよ、千ちゃんも分かってるくせに!」
宮田は困り顔ながらいつものニヤニヤ顔をしているけれど、宮田が言うことはいつも的を射ている。
Aさんは彼氏と別れたい、か、そういう関係になってきているのだ。きっと。
検索するくらいだから、俺でもわかる。
ただ、俺なんかAさんと…という自信の無さから何もできない。
でも、最低だけど、嬉しい気持ちもある。
散々見てきた彼女が彼氏を話す姿も、俺を送った後彼氏の家に行く姿も、彼氏の家から俺を迎えに来る姿も、
何度も悲しくてどうしようもなく寂しくなったけど、もうその姿を全部、見なくて済むんだ。
「千ちゃん、言ってたじゃん、マネージャーさんが幸せだったらそれでいいって」
「楽屋でね、言ったね」
「千ちゃんが幸せにしてもいいじゃん。
俺、千ちゃんと話したりしてると楽しいよ。」
「幸せのコスパいいなお前はー」
「みんなそんなもんだって。幸せのハードルなんて。」
たしかにね。Aさんと喋ってるだけで俺は幸せ。
なかなか良いことを言う宮田は、やっぱり、あんなだけど大人だなあなんて感心する。
すると、
「あっ、千賀さん!お疲れ様です。
すみません収録間に合わなくて!」
Aさんが、収録中打ち合わせをしに行った事務所から戻ってきた。
宮田もソワソワとこっちを見ている。
今気づいた。
耳、彼氏からもらったピアス…してない。
「…あ、Aさん、」
「?どうしました?」
「あの、えーと」
「?」
「今度の食事、広尾の!高級中華にしません?!」
うしろで、宮田のずっこける音が聞こえた。
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作者名:soda | 作成日時:2020年6月12日 0時