・ side y ページ6
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はたから見たらかなり不機嫌だろう。
イライラと分かりやすく貧乏ゆすりまでして、
1分に1回は「はあ〜〜」とため息を口から漏らす。
「そんなに連休楽しみだったんですか？」
なんて、新しいマネージャーの子が冗談で言うのでそれにも大人げなくイライラしてしまう。
俺の様子を見て黙ってしまった彼女。
って、そんなことどうでもよくて
早くAちゃんに連絡しなきゃ、とLINEの画面を開くと
「横尾さん、ここはどうですか？」
なんてホームページのリンク付きの通知が来る。
「あー、もう。」
やるせ無くて、Aちゃんにも申し訳なくてつい口から言葉にならない声を漏らす。
運転席の彼女の体がビクッと揺れた気がした。
AちゃんのLINEのリンク先に飛ぶと個室温泉があるような箱根の旅館。
宿泊費もなかなかだけど
「贅沢すぎますかね？」と追ってまた連絡が来る。
…泊まらせてあげたいよねえ、こんなの。
「…高橋さん、火曜の収録って何時からなの？」
初めて彼女の名前を呼ぶ俺。
彼女も初めて名前が呼ばれるのがこんな無愛想でイライラしてる感じで申し訳ないけど。
さっきから俺を恐れてビクビクしてる彼女は
「18時です！」と俺の顔を伺いながら答える。
どんなに長くても音楽番組なんて2時間あれば収録自体は終わる。
その後ならどうだろう？旅行に行けなくもない。
休みの次の日の収録もお台場に17時だし。
うん、行ける。
リンク先の残り一室と書かれた赤い文字をタップして、即予約。
もちろん1番高い懐石料理付きの高級プラン。
一泊の旅行にこんなに高い金額を払ったのは初めてだったけれど、楽しみにしているAちゃんへの罪滅ぼしだ。うん。
「あー、一室空いてたのに満室になっちゃいました」
と残念そうなLINEがAちゃんから来る。
それ予約したの俺、なんて格好良く言いたいけど
そんなこと言う前にその日に仕事がある事を言わないといけない。
…
…言える訳なくない？
だってこんなにAちゃんから連投でLINEが来るなんて、よっぽど楽しみにしてるのが画面越しにですら伝わる。
ごめん、仕事が夜入ってたみたい
本当にごめん
と、文章を打つものの、送信ボタンをタップする指は画面をウロウロして、
結局削除してしまうのだった。
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作者名：soda | 作成日時：2020年5月26日 2時
