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今日からツアーが始まる。
東京、愛知、埼玉、大阪、福岡。
毎回始まる前はマネージャーの私でさえ食事も喉を通らないくらいの緊張で、きっとキスマイのメンバーもそれは一緒。
東京ドームの楽屋で待機中。
机に向かい合わせに座って横尾さんを観察する。
彼はというと、いつもと変わらない表情をしている。けれども
「あれ、俺歯磨きセットもったっけ、あ、入れてるわ。」
「携帯の充電器忘れたかも。あ、いや、なんでもない、あったわ。」
なんて鞄をごそごそ漁って、独り言を言っては自分で返事をするという挙動不審なあたりまあまあ緊張してるんだろう。
「横尾さん落ち着いてください。」
「落ち着いてるけど」
ツーンと返してくる横尾さん。
図星を突かれてるようで嫌だったらしい。
「Aちゃんさあ」
「んー、なんですか?」
「千賀からLINEくる?」
そのツーンとした感じで、ついでのように続けて喋る横尾さん。
何をこの人はツアー始まるっていうのに考えてるのだろうか。
「えーまあ、ほどほどに?」
「何それ。ふーん。」
口を尖らせてスマホをいじり始める横尾さん。
あ、やばい。この横尾さんは。
たまにお昼ご飯のチョイス間違った時やスタッフに失礼された時に陥る、不機嫌になる流れのパターンだ。
千賀さんからLINEがくるといっても日常会話レベルだし、続いても2、3回の会話だけど
…そんな言い訳をしてもこの不機嫌ルートは回避できない。
いろんなパターンの返す言葉を考えていると、
「呆れてるんでしょ」
そう、今度はしおらしく言う横尾さん。
今まではこっちが謝り倒して時間が経つのを待つのがお決まりだったのに、軽く自分から折り合う所を見せてくれる。
なんだこのかわいい生き物は。
「呆れてないですよ、やきもちですか?」
そう横尾さんの横に座りなおして優しく聞けば
「そうだけど」
なんて、素っ気なく目線を合わせないように言うのだった。
「横尾さんが思ってるより、私は横尾さんしか見てないですよ」
「じゃあ、
…今日のライブもずっと俺だけ観ててよ」
言ってることは傲慢で俺様な台詞だけども
ちょっと切なそうに言うものだから、また更に可愛く思えて笑ってしまった。
「ふふ、横尾さんしか見ません」
「絶対千賀見ちゃダメだよ」
念押す横尾さん、ようやくこっちを見てくれて。
ぎゅうっと私の手を握った。
「ちゅーすると思いました」
冗談で私が言うと
「するつもりだけど」
横尾さんは表情を変えずに顔を近づけて、
誰もいない楽屋にちゅ、と控えめに響かせるのだった。
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soda(プロフ) - れんじさん» わあーありがとうございます!!もっとキュンキュンできるようがんばります!!! (2020年4月30日 7時) (レス) id: 058fb893a4 (このIDを非表示/違反報告)
れんじ - めちゃめちゃ好きですキュンキュンします (2020年4月30日 1時) (レス) id: 687054fca2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:soda | 作成日時:2020年4月12日 23時