🌙 ページ9
『オマエハアノオトコガニクイ』
あの時…確かに見えた、そこにはその影が見えた
紅に襲いかかる魔の手のような…殺意のような
『コロセ』
今まではずっと夢の中だけだったのに…どうして今になって突然…
『ワスレルナオモイダセアノトキノイタミヲ』
火蛍「うるさい…！！」
影を追い払うように炎を凝縮させた青い刃を私のすぐ背後を突き落とす
影が私に囁く…後ろから見られている
今までこんなこと無かったのに…
火蛍「…はぁ…私なんかが手を出さなくても紅は自分の身は自分で守れる…余計なこと…しなきゃよかったな…ｸﾞｽｯ」
紅丸「おいかすり傷だっつてんだろ泣き虫野郎」
火蛍「……野郎じゃ…ない…ｸﾞｽﾝ」
つい裸足で飛び出してきちゃったから仕方なく詰所の屋根にいるしかなかった
火蛍「灯台上灯りでここでも見つからないと思ったんだけどな…」
紅丸「灯台下暗しだろ…そんな格好じゃ湯冷めするぞアホ」
火蛍「心配してるのか貶してるのかどっちかにしなさいよ…」
そう言って私の隣に座って第七の羽織を私の肩にかけてくれる
紅丸「…話せとは言わねぇ…火蛍自身で決めろ」
いつもこうやって守られてばっかり…
浅草の外じゃ2人の煉合消防官なんて言われてるけど…能力は圧倒的に紅の方が強い
私なんて操作性が器用なだけで戦闘になんて役に立ちっこない…
紅と同じ土俵になんて立てっこないんだ…
火蛍「……話すよ…怖くなんて、ないし…」
紅丸「…ほら」
手を繋いでやると言わんばかりに手を差し伸べてくれる
別に強がってた訳じゃないんだけどな…
そう言っても体は正直だ、怖いものは怖いし痛いのも苦しいのも嫌だ
火蛍「…あのね」
紅の手を握って私に起こった出来事を話す
白と黒い炎だけの世界の事
私自身に似た紅に敵意がある影の事
脱衣場で私が見たもの…
紅は驚くような表情を時折見せながら考えるような素振りをした
私にだってなんなのかさっぱり分からないんだから紅丸に分かるはずがない←
紅丸「…にわかに信じ難いが火蛍が言うなら嘘はねぇ」
火蛍「信じて…くれるの…？」
紅丸「あ？俺が信じないで誰が信じる…だからもう泣くんじゃねぇ」
私…泣いてたんだ…全然気づけなかった…
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作者名：エリンギ | 作成日時：2022年3月10日 17時
