恋愛対象外だったはずの同期と再会したら、色気MAXになってた件。【諸伏景光】

かくご ページ34

ヒロ side





結構な人数を撒いたと思う。

追いかけてくる奴の気配も減ったし、組織じゃオレは死んだことになってるのだろうか。



「……ゼロが上手く言ってくれてるといいけど」



オレは廃ビルに逃げ込んで呼吸を整える。

壁はボロボロで屋上への階段は錆び、ところどころ天井がなかったりする荒れ放題の廃ビル。ここなら組織の奴はともかく、一般人が来ることはない。

一般人を巻き込んで危ない目に遭わせるのだけは避けたかった。



「なんで、Aちゃんにあんなこと送っちゃったんだろ…」



ふと、何時間も前にAちゃんに送ったメッセージを思い出した。



彼女は組織と一切関係がない人間なのに、あんな不安を煽るようなことを書いて。

オレは何を求めてあのメッセージを書いたんだっけ。



ただひとつ分かるのは、Aちゃんと離れたくないということだ。



大好きだ。ずっと。

隣で幸せにしたい人。



…しかしそんな綺麗事を言っている場合ではない。

組織の奴らから逃げなくてはいけない。

死も覚悟しなきゃな＿＿＿＿



そのとき、誰かがこの建物に入ってくる音がした。



「おい、スコッチがいたぞ！」

「はは、撤退命令が出てたけど念のため見回った甲斐があったなぁ？」



オレに銃を構えて近づいてくるのは組織の男5人で、コードネームを持っていない者たちだ。

オレを殺せばコードネームが手に入るかもしれないのだろう、男たちは唇は弧を描いている。



「…数は圧倒的に負けてるけど狙撃の腕前なら負けないからね、」



オレも銃を構える。



もちろん殺すつもりはない。



ただここで両手を挙げてしまったら、命を捨てるのに等しいからだ。

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