あまおと ページ21
もう20年も前の話。私が9歳だった頃。
大雨の日、お母さんがいなかった私は小学校の先生に送ってもらって家へ帰った。
そしたら机には、お父さんの書き置きがあった。
【お父さんは少し出かけてきます。近所の子がこの雨の中ゆくえふめいなので、さがしに行ってきます。
ごはんは自分で温めて、先に食べていてね】
優しいお父さんらしいまるっこい字は、私が読めない漢字はひらがなで書いてくれていたので充分に理解できた。
私は書き置きの通り自分でご飯を温めて、食べながらお父さんの帰りを待った。
病気で死んだお母さんの分まで、私と兄の面倒を見てくれた大好きなお父さん。
そんなお父さんは、帰ってくることはなかった。
耳を塞ぎたくなるほどの雨音が響き渡り、
川で溺れた行方不明の子を助けるためにお父さんが犠牲になったという事実だけがそこに残った。
▼△▼△▼△▼△
ハッとして目が覚めた。
いつから寝ていたっけ…？
それすら思い出せない。
『ん…今何時………って、』
景光くんが、いる。
私と同じソファーの上で規則正しい寝息をたてている。
しかも、私を抱きしめるような形で。
そこで昨日の大雨で私が恐怖を感じ、彼を無理矢理引き寄せてしまったことを思い出した。
瞬間、頬がかぁっと熱くなる。
い、いい年して何してるんだ私は…！
『…でもこうして寝顔を見ると、やっぱり可愛い顔してるじゃん』
眠っている景光くんは無防備で、警察学校時代から変わらない可愛さがある。
7年も会ってないとはいえど、彼は彼だ。
そこでふと、私は思い出した。
警察学校時代も、大雨が怖くて景光くんに助けを求めたことがあったっけ…。
そしたら彼は、『大丈夫だよ、オレがいるから…』と言いながらずっと側にいてくれた。
そして今回も。
『…………。』
よくわからないけど気持ちがいっぱいになって苦しくて、景光くんの胸のあたりに顔を埋めた。
すると彼の甘い香りが脳を支配して、更に苦しくなる。
苦しいのに、嫌じゃない。
むしろ、もっと欲しい。
もうちょっとだけ、このままで＿＿＿＿
「随分可愛いことしてくれるんだね、Aちゃん」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1260人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くるみ(プロフ) - とっても面白かったです (10月6日 0時) (
レス) @page47 id: dd662f3c96 (このIDを非表示/違反報告)
Rei(プロフ) - はじめまして、景光くんの優しさや真面目さが大好きなので、景光くんの一途な思いに凄くときめきました。素敵な作品をありがとうございます。 (2022年9月21日 3時) (レス) @page47 id: 8f97d5546c (このIDを非表示/違反報告)
江良(プロフ) - 足軽さん» コメントありがとうございます！大好きだなんて嬉しいです…！このお話が栄養剤になるなんて光栄です(笑)疲労をほぐして頑張ってくださいー！ (2022年8月28日 15時) (レス) id: 37f133a8ec (このIDを非表示/違反報告)
足軽(プロフ) - 大好きすぎます………栄養剤になりますありがとうございます………疲労によく効く…… (2022年8月28日 15時) (レス) @page1 id: 762e6989c9 (このIDを非表示/違反報告)
江良(プロフ) - 田舎ママさん» コメントありがとうございます！素敵だなんて…！めちゃくちゃ嬉しいです！こちらこそ最後まで読んでいただきありがとうございました！ (2022年8月19日 12時) (レス) id: 1888b997ab (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
