恋愛対象外だったはずの同期と再会したら、色気MAXになってた件。【諸伏景光】

わがまま ページ17

ヒロ side




Aちゃんの腕に身を任せながら、オレは思い出した。



2年前、ノックだとバレた時のことを。



本当はあの時、オレはこの世から逃げなければならなかった。

実際そうしようとして、自分の心臓に銃口を突きつけた。



ライが止めに入ったものの、オレたちがいた屋上へ続く階段を登ってくる音が聞こえて＿＿＿＿

裏切り者のオレを追ってきた組織の奴らだと思った。



だから、そこで引き金を引いた。



いや＿＿＿＿引くべきだった。



引けなかった。



突然、Aちゃんの泣き顔が蘇ってきて。



＿＿＿『アンタたち、どっかでポンと死んだら許さないからね！』



警察学校の卒業式が終わって、その別れ際。



目に涙を溜めた彼女が、オレたちに言った言葉だ。



大好きで今でもその恋心を忘れられない。



そんな彼女の言葉を思い出したら、誰が死ねるというのだろうか。



オレは銃口を心臓から離してしまった。



のちにあの足音はオレを心配して追ってきたゼロだったことを知ったのだが、オレは自分に呆れた。



今回はゼロだったから良かった。

でも本当に組織の奴だったら？



オレはあのとき死ぬはずだったのに死ななかった、死に損ない。

私情で引き金を引けなかった奴だ。



でもそれ以上に＿＿＿＿



生きていて良かったと思って



彼女に会えるチャンスを守れたと思ってしまったのを



“人間の本能だから”という言葉で片付けてしまっては叱られるだろうか。

にげば→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す