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気づいたら自室に戻っていた。
いつのまにか夕食の時間も過ぎてしまっている。
«そんな驚くこともなかろう。
15なぞ、すでに嫁に行っていてもおかしくない年だ。
いやなに、気が乗らぬのであればいいのだが…
1人いい年頃の者がおるでな。まあ年の功は24なのだが»
お上の言葉が脳内で再生される。
どうやら急な呼び出しとは、己の縁談の話で
気が乗らないのならと言いながらも、
拒否権のない申し出でに身震いした。
私は、なんと答えた…?
自分の返答がどうしても思い出せない。
しかし最後に
« また近々 »
と嬉しそうに微笑んでいたお上の言葉が、
きっと答えだろう。
『………結婚。』
忌み嫌われてきた幼少時代。
幸せなんてものを追い求めたことなどなかった。
ましてや結婚など、
自分には縁のないものだと思っていた。
『……宿儺は、どう思うのかしら』
これも、貴方の言う余興とやらかしらと
そう考えながら、
いつのまにか私は意識を手放していた。
*
宿「おい」
低い男の声に、私は目が覚めた。
宿「人が祝いに来たのに、寝てるとはいいご身分だ」
目を開けると、そこには不機嫌そうな宿儺の顔が覗いていた。
もう、子の刻なのか…
重い頭をもたげて、『ごめんなさい』とか細く返す。
その姿に違和感を感じたのか
宿「…どうした。面白くない顔をしているぞ」
その憂い顔は面白くない、やめろと
苦虫を噛み潰したような顔でこちらを見る2つの顔。
そう嫌味を言いながらも、彼はどかりと私の前に座る。
これでも彼なりに心配してくれているのだと気づき
少し心が軽くなる。
『…ねえ、』
宿「まだ殺さんぞ。そんなつまらん顔している奴を殺しても面白くないからな」
彼は間髪入れず応える。
『そうじゃないわよ。まあ、殺してくれないことは残念だけれど…』
じゃあなんだ、と近くにあった本を読むでもなく
パラパラとめくる彼の顔には「つまらん」の4文字が見て取れる。
『私、ね。結婚することになるみたい』
ぴくり、と宿儺の耳が動いた。
しかしそれも束の間
宿「……ほぉ。面白い。全てを失ったあの荒屋にいた童が、結婚!お前の好きな物語のようなじゃァないか」
そういう逆転劇は、現実でお前しかなし得ぬ!
これは一興!
と物の怪は高らかに笑う。
宿「結婚もまた一興。やってみろ、どこまでもお前の人生を荒らさせて、俺を楽しませるんだ」
傲慢な彼はそういい、カッカと笑った。
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ゆりあ(プロフ) - 最高に面白かったです!二人の関係性から、彼女の心情の変化、特にラストの締めくくり方が凄くジーンときました。素敵なお話をありがとうございます! (2020年12月29日 10時) (レス) id: 45a22d77c5 (このIDを非表示/違反報告)
しゅがー(プロフ) - 面白くて一気に見ちゃいました!笑源氏物語にも興味が湧きました!続編楽しみにしています! (2020年12月21日 22時) (レス) id: 13895ddbea (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - すごく面白かったです!続編楽しみにしてます!頑張ってください、 (2020年12月21日 20時) (レス) id: 8f9f2425a1 (このIDを非表示/違反報告)
鬼灯 - 一話から最終話まで一気見しました!ここまで真剣に読んだのは初めてですw 続編も頑張ってください! (2020年12月21日 18時) (レス) id: 0253c03d6e (このIDを非表示/違反報告)
ミズカ(プロフ) - 続編嬉しいです!ありがとうございます! (2020年12月21日 18時) (レス) id: 9ec620cc69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アイコ | 作成日時:2020年12月18日 11時